月別アーカイブ: 2009年12月

『ヒットを生み出す最強チーム術』

ヒットを生み出す最強チーム術 キリンビール・マーケティング部の挑戦 (平凡社新書) ヒットを生み出す最強チーム術 キリンビール・マーケティング部の挑戦 (平凡社新書)
価格:¥ 735(税込)
発売日:2009-09-16

Amazonのこの ↑ 形式のリンクの欠点は、著者名が表示されないことですよね・・・。
本書の著者は、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、一躍有名になった(と思うのですが)キリンの佐藤章氏です。
番組出演当時(2006年だと思います)、佐藤氏はキリンビバレッジに所属していました。飲料業界は、年に100~150もの新商品を上市するものの(1社で、です)、1年後に生き残るのは数商品しかないという熾烈な競争を行っている市場です。その中で、佐藤氏は多くのヒット商品を生み出してきました。2007年にキリンビールに異動され、ビール市場でもヒット商品を生み出しています。
本書では、これらの商品開発の舞台裏を紹介しながら、仕事における「チーム術」について書いています。

もくじは、つぎのように。

第1章 「一番搾り」リニューアルの舞台裏
第2章 落ちこぼれからのスタート
第3章 "確信犯"がヒットを生む
第4章 商品開発は異種格闘技
第5章 言葉をいかに磨くか ―会議とプレゼンの技法
第6章 縄文サラリーマンのすすめ
対談  佐藤可士和×佐藤章 ものづくりはコミュニケーション

このもくじでは、本書のポイントは伝わらないかもしれないです。。。
そこで、帯にある「本書の内容」から。

・ものづくりの現場では多数決と民主主義は意味がない
・どう仮説をたてるかで新商品の成否は決まる
・大きい市場、伸びる市場を狙う
・会社の都合で商品はつくらない
・危機感の共有が会議を盛り上げる
・上司が部下にできるのは"場"を与えること

メインテーマは、タイトルにあるように、仕事におけるチーム(ここでのチームは社内に限りません、社外を含めたチームです)の運営についてです。ただ、題材が商品開発ですので、商品開発の流れやポイントを理解することができる内容になっています。
「商品開発はひらめきだ」という方も少なくないですが、佐藤氏のスタンスは、ひらめきだけでも、データだけでもない、2者のバランスです。仮説や確信の重要さを主張するとともに、その仮説も日々のインプットから生まれること、さらにその仮説を検証することの大切さもきちんと書かれています。そしてこのバランスを、「個人」としてではなく、「チーム」として運営していくことの大切さを説いているのが、本書のメインテーマだと思います。

いくつかを紹介すると・・・。

どんな時代でも、消費者は潜在的に「こんなものがあったらいいなあ」と心の中で思っています。その心の動きに寄り添い、答えを探し続ける。それが、商品開発の仕事の醍醐味です。(p.15)

商品は世に出た瞬間に開発者のものではなく、消費者のものになります。そこを忘れて、作りたいものを作ってしまうと、消費者からそっぽを向かれてしまう。商品開発では、決して消費者目線を忘れてはいけません。(p.39)

市場調査から浮かび上がった数値やデータはあくまでも結果であって、その背景には消費者の心の動きがあります。消費者の"今の心の揺れ"に注目することが、次にくるシナリオを先読みするヒントになります。(p.70)

他にも引用したいフレーズはたくさんあります。ここで紹介しだすときりがないので、これくらいにしておきます。。。
それに、フレーズの断片を切り出して紹介しても、文脈として理解してもらわないと誤解を招くかもしれないですので。

新書ですし、語り口調のわかりやすい文章ですので、ぜひ読んでみてください。
商品開発、仕事を進める上でのチーム運営、仮説を生み出す思考法、日頃のインプット方法、プレゼンのポイント、などについてのヒントを得られると思います。

PS.
佐藤氏がNHK「プロフェッショナル」に出演した時の内容は、こちら ↓ の本でどうぞ。
(この巻は、佐藤氏以外のお二人も、興味のもてる内容だと思います。いずれも、時代やお客様に向き合うことがテーマになっていますので)

プロフェッショナル 仕事の流儀〈4〉 プロフェッショナル 仕事の流儀〈4〉
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2006-07

『世論の曲解』

世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書) 世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書)
価格:¥ 861(税込)
発売日:2009-12-16

このblogでも何度か「世論」に関するエントリーを書いてきましたが、その世論について新たな見方を示してくれるのが本書です。
著者は若手の政治学者です。だからでしょうか、少し挑戦的な感じも受ける本です。ご本人も、「本書は、手軽に知見を得るための本ではなく、挑戦的な議論と検証を行う種類の本である」(p.20)と言っているので、間違いないと思いますが^^;

2005年のいわゆる「郵政選挙」以降の世論や政治状況を理解する上でもおもしろいのですが、世論調査、広く見れば調査全般、データの読み方について学ぶ上でも、おもしろい本だと思います。

では、まずもくじを。

第1章 寝た子を起こした?-2005年総選挙・郵政解散の意味
第2章 逆小泉効果神話-曲解される2007年参院選の「民意」
第3章 逆コースをたどる自民党-安部政権はなぜ見限られたのか
第4章 「麻生人気」の謎-2007年総裁選・迷走の構図
第5章 作られた人気-「次の首相」調査の意味
第6章 世論とネット「世論」-曲解が生まれる過程
第7章 「振り子」は戻らない-2009年総選挙・自民党惨敗の表層と底流
終章  自民党大敗の教訓-世論の曲解を繰り返さないために

このように、巷間言われてきたいくつかの見方、解釈に対して、データ分析を通じて斬りこんでいくという内容の本です。
その対象となっているのは、「郵政選挙はマスコミに踊らされた結果」「07年参院選の自民大敗は逆小泉効果の結果」「麻生首相誕生は国民的人気の結果」「若者の右傾化」「09年総選挙の自民党大敗は振り子が民主に振れた結果」といったものです。これらの見方、解釈が、世論や世論調査を読み違えた結果として、もたらされたと主張しています。

具体的なデータ分析や議論、どのような主張なのかは本書を読んでいただくとして、ここではデータに向き合う姿勢についての学びをしていきたいと思います。

まず、なぜこのような「曲解」が起こるのか。著者は、つぎのように書いています。

人は、自分の考え方や事前に有している印象や情報にしたがって、物事を解釈しがちである。さまざまな情報やデータが周囲にあっても、自分の考えに合致する、都合のよいものだけを選び取ってしまう習性がある。少し難しい言葉で言えば、これを確証バイアスという。(本書「はじめに」pp.16-17)

これは、多くの人が陥る習性だとも思います。そして、「自分の考え方や事前に有している印象や情報」も、当然、日々の情報によって形成されているわけです。
たとえば、「麻生人気」の背景として、つぎのようなことがあったとしています。

08年総裁選時には、他にもいくつもの「国民的人気」の「証拠」が登場した。たとえば麻生太郎が書いた本の売り上げや、麻生饅頭の売り上げなどがそうである。「麻生人気」に限らず社会のごく一部による行動、限定的な現象を、一般的であるかのように語る、もしくは錯覚させる報道や言説が、政治の世界でも多い。(本書 p.141)

とかくマスコミはひとつの事象に対して集中豪雨的な報道をしがちですし、得てしてステレオタイプな、一般的に受けのいい言説を行いがちだなと日頃から感じていますので、この指摘には同意できます。

そして、このような判断の偏りや歪みは、当然、政治の話だけではないでしょう。私たちの日々の判断、ビジネス上の判断でさえ同様ではないでしょうか。
自分が多く目にしたり耳にする、自分の納得性が高い、あるいは心に残る「エピソード」だけを頼りに判断するケースを、少なからずみかけます。しかし、そのエピソードが出てきた背景や、そのエピソードが語られる文脈を理解することが重要ですし、さらにそのエピソードに対する反証例がないのかと考えることも欠かせないでしょう。
情報やデータをどれだけ多面的に見ることができるか、自分のもっている仮説や信念を批判的に見て自ら検討することができるか、ということが必要なのだと思います。
(そして本書についても、ここに書いてあることを鵜呑みにするのではなく、この分析や論理は正しいのか、という視点も必要なのだと思います)

とはいえ、このような姿勢はなかなか難しいものです。
まずは本書で、これまでの“世間的な常識”がどのように批判されているのかを見ることで、多面的な分析や批判的な検討とはどのようなことか、を学んでみてはいかでしょう。
単純集計によるデータの読み取りだけでなく、データの深い読込みには「視点の持ち方」がどれだけ重要かということも感じていただけるのではないかと思います。さらに、調査それ自体についての理解を深めるためにも。5章「次の首相」調査の意味などは、日々のリサーチを考える上でも参考になるのでは?(ベテランの方にとっては常識の範囲だと思いますが・・・)

PS.
(本書とはまったく関係ない内容だとは思いますが、「データの見方」という点では参考になると思うので・・・)
『とみざわのマーケティングノート』さんにて、先日のM-1結果についての分析をしています。
「笑い飯への紳助の100点」が話題になっていましたが、このように分析すれば取り立てて特異なことではないことがわかります。(そして、このようなデータを見ると、リサーチにおける得点も素直に集計してしまっていいのかと思いませんか?)
このような疑問をもつこと、そして実際に計算をしてみることが大切なのですね。
興味のある方は、ぜひこちらも。

M-1笑い飯、紳助の100点は東国原の92点
(「とみざわのマーケティングノート」2009/12/21)

『「嫌消費」世代の研究』

「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち 「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2009-11-13

1ヶ月くらい前に出版されている本ですが、いまでも平積みしている本屋さんをよくみかけますので、すでに読まれた方も多いかもしれません。(帯に書いてある「クルマ買うなんてバカじゃないの?」という惹句が、効いている気がしますけど・・・)
よくある、「いまの時代」解説本のひとつのように見えますが、類書とは異なり、やや骨太な内容の本だと思います。

(ここで、個人的な話を少し。。。
本書の著者である松田さんは、私が社会人となって最初に影響を受けた人、といっても過言ではありません。社会人として入社した直後の研修で、「社会人は学生以上に勉強をしなければならない」「月に1万円は本を買え」と言われたことは、いまでも記憶に残っていますし、この言葉があったからこそ、いまの私があるのかもしれません。社会科学の方法論や、リサーチのいろは、データの読み方、多変量解析などを最初に学んだのも松田さんですし)

さて、本書に戻ります。。。
まずは、もくじを。

第1章 嫌消費の時代
第2章 嫌消費世代の登場とプロフィール
第3章 嫌消費の要因は世代特性か、低収入か
第4章 世代論はどこまで有効か
第5章 嫌消費世代のマインドと市場攻略
終章  未来の消費社会

本書の目的について、「はじめに」の中で、つぎのように書かれています。

嫌消費の事実はどこにみられるのか。どんな層が担っているのか。なぜ嫌消費なのか。嫌消費は広がるのか。彼らにどう対応したらいいのか。経済にどのような影響を与えるのか。本書では、これらのテーマを明らかにした。そして、この問題の分析に活用したのが「世代論」である。(本書「はじめに」pp.1-2)

タイトルやもくじを見ても、この「はじめに」でも、「世代」がキーワードになっていることが分かります。そして、この本の特徴と価値は、この「世代」論で分析を行なっていることにあると思います。

「いま」を分析するときに、いくつかの視点があります。“時代”、“年代”、そして“世代”です。

まず“時代”。
多くの場合、この“時代”という言葉で現象を解説しますし、「いまは、XXXな時代だから」といわれると、妙に納得してしまうマッジクワードでもあります。しかし、ほんとうに“時代”が、大きな要因となっているのかはきちんと検証しなければならない場合が多いようにも思います。そして、もしも“時代”が現象を説明する真の要因ならば、今後、変化をする可能性もあるわけです。(景気変動やファッションの循環性などは、この時代による変化といえそうです)

ふたつめは“年代”や“ライフステージ”。
ある特定の“年代”で特徴づけられる現象を取り上げて、いまを説明しようとするものです。しかし時代と同様、ほんとうに“年代”や“ライフステージ”で説明できる要因なのかということは、きちんと検証する必要があると思います。年代で説明できるということは、歳を重ねる、あるいは家族形成の過程で、その現象は変化するということですので、いずれはその年代特有の現象は消滅していくと考えられます。(「ルーズソックス」や「やまんば」といわれた現象は、この年代によるものかもしれません。ある時代の特定年代に特有の現象で、彼女たちの成長とともに消滅した現象だったということで)
また、“年代”と“世代”を、結構あいまいに使っているので、この点も注意が必要です。たとえば、「いまの若者はXXXだ」という場合、ここで言われている「若者」は、ある特定の年齢に紐づいた“年代”について語っているのか、あるいはつぎにみる(ある特定の「生まれ年」に紐づいた)“世代”について語られているのか、判然としない場合が少なくありません。

そして、3つめに考えたいのが、今回のテーマである“世代”です。
もしも、ある現象をもたらしている要因が“世代”だとすると、その現象は構造的なものとなる可能性が高いといえます。なぜなら、“世代”によるとするなら、基本的に変わることのない価値観に根ざした変化なわけですから、いわゆる時代が変化しても、歳を重ねても、ライフステージの変化でも、大きく変わることがないと判断できるからです。
たとえば「ファストフード化」は、世代の要因が大きいのではないかと思われる現象です。たしかに、時代の影響のように見えますが、マクドナルドやカップヌードルで育った以前の世代の人たちが、それ以降の世代の人たちと同様にファストフードを食べるかというと、そんなことはないでしょう。では年代かというと、多少は加齢によって利用頻度は減るでしょうけど、まったく利用しないというわけではない。むしろ、先ほどの「マクドナルド&カップヌードル」を小さい頃に経験したか否かということで、その食用傾向が異なるというのが一番の要因ではないでしょうか。(家計調査のデータを利用して、このような仮説を検証している研究もあります)

「世代とは何か」については、本書で詳しく述べられていますので、世代をきちんと理解するためにも本書はお勧めです。
というか、「いまの時代を理解するため」というよりも、「世代を理解する」「世代による分析の有効性を理解する」ということが、本書の大きな貢献ではないかと思っていますし、ここで本書を紹介したいと思ったのも、この点からです。

しかし一方で、実務上、この「世代」で分析を行なうことは、あまりないのではないかと思います。その大きな要因として、先ほどの“時代” “年代” “世代”を厳密に分ける手法として活用できる「コーホート分析」には、ある程度長期のデータが必要になるからです。また、コーホート分析のソフトもあまり見かけないですし。。。(コーホート分析、ご存知ですか? このコーホート分析についても、本書である程度理解できると思います)

本書で「世代による分析」の有効性と、そのための「長期継続調査」の有用性、そして「世代」による分析の方法の一端を、理解していただければ、と思いました。
ファッションやトレンドのような表層的な変化ではなく、本質的、構造的な変化を見極めるにはどうすればいい?、と思っている方には、一度読んでみてほしい本です。

PS1.
似たようなタイトルの下記の本も読み比べてみるといいかも。
こちらは、少し社会学的なスタンスの本ですが。

欲しがらない若者たち(日経プレミアシリーズ) 欲しがらない若者たち(日経プレミアシリーズ)
価格:¥ 893(税込)
発売日:2009-12-09

PS2.
著者の松田さんのセミナーが、JMA(日本マーケティング協会)で、2010/1/26にあるようです。詳細は、下記のHPでどうぞ。

JMA特別セミナー「消費の地殻変動を読む~キーワードはスマートな消費~」
(日本マーケティング協会HP)

PS3.
松田さんの論文は、下記のHPにも多数あります。全文を読むには会員登録が必要ですが、本書を読んで興味をもたれた方はぜひ。(ただし、かなり骨のある文章です。。。)

戦略家のための知的羅針盤<M Next>
(JMR生活総合研究所)

『変わる家族 変わる食卓』

本を読むことから少し離れていたのですが、このごろ少し復活。さらに、積んでいた本も読んでみると、結構おもしろいなと思う本も多くて。。。
なので、過去に読んで紹介し忘れた本も含め、新旧織り交ぜながら、年末に向け本の紹介を高頻度でやってみようかなと思っています。(あまり、期待せずにお願いします・・・)

変わる家族 変わる食卓 - 真実に破壊されるマーケティング常識 (中公文庫) 変わる家族 変わる食卓 – 真実に破壊されるマーケティング常識 (中公文庫)
価格:¥ 940(税込)
発売日:2009-10-24

まずは、この本から。
単行本で出版されたのは2003年、当時それなりに話題になった本だと思います。立読みはしていたのですが当時は購入せず、最近文庫になっているのを見かけて購入しました。

本書の内容は、家庭の食卓を定性的に追ったリサーチ結果です。紹介文はつぎのように。

首都圏に在住する1960年以降に生まれた<子どもを持つ>主婦を対象として、5年間にわたって実施された食卓の実態調査<食ドライブ>によって明らかにされた驚くべき現代の食卓の実態。食卓写真付きのアンケートの徹底分析によって、日本の家庭で起きている人間関係、価値観、教育観等の変化にも迫る。
(本書 背表紙より)

本書を読んで考えさせられたことは、実はいろいろあります。順に紹介してみます。

◆エクストリームユーザーの重要さ

まず本書についての Amzon のコメントをご覧になってください。これほど、いい評価と悪い評価が分かれる本は、そう多くはないでしょう。できれば、同著者の別の本のコメントも見てみてください、最後に本を紹介しておきますので。
とくに批判派のスタンスは、「一部の特殊な例をとりあげて、あげつらっているだけだ」「自分の周りにはこんな人はいない」「科学的でない」などといったものでしょうか。(なんか、自分の考え方や感覚と異なる調査結果が出ると、「この調査はおかしい」とおっしゃる方たちを想起してしまいましたが・・・)
あとは、文章自体への批判も少なくないかもしれません。たしかに、少し上から目線というか、感情的ともとれる文体ではあるかな、とも思いますが。

先に、「単行本のときは買わなかった」と書きました。それは、なんかエキセントリックな内容だなと思ったから、というのが正直なところです。つまり、Amazonコメントでの批判的な方たちに近い感想を持ったということです(あそこまで嫌悪感は感じませんでしたけど・・・)。大いに反省しないといけないですね、リサーチャーとしては。。。
いま改めて本書を読んでみると、当時感じたようなエキセントリックさを、あまり感じません。どこの家庭でも少なからず似たような状況にあるのではないか、と思えます。つまり、ここに書かれている2000年前後の食卓は、いまに至る兆候であったと考えることができるのではないかということです。
(しかし、裏腹ではありますが、一方で企業がこのような家庭の状況を促進したという面も否めないと思います。兆候をどう捉え、それに対しどのような未来を描き、そのために企業がどのような活動を行なうかによって、未来は異なるということも忘れてはいけないと思います。・・・・・・あれ、なんかドラマ「仁」のテーマのよう^^; )

定量調査は、いまの平均的な像を知るには有効だと思います。しかし、新たな市場を開拓したり、今後のシナリオを考えるには、エクストリームといわれる極端なユーザーの実態を眺めることが有効であると、あらためて気づかせてくれた本でした。(ビジネスにおける)エスノグラフィでは、「エクストリームユーザー」に注目すべきということが言われたりしますが、本書を読むと「まさに」と思わずにいられません。
(たとえば、こちらの過去エントリーを参照→ 『デザインリサーチメソッド10』 )

◆社会学的な視点が重要になっているのでは?

また、本書を読んで、いまは社会学的な視点が重要になってきていると感じています。
本書で行われている調査は、確かに「食」に関するマーケティング・リサーチといえるかもしれません。しかし、単純に、安直に、マーケティング・リサーチとは言い切れない感じも。
著者は、つぎのように書いています。

効率化の時代、みんな、すぐに結論が欲しい。すぐに原因が知りたくて、すぐに解決策が欲しい。だから手っ取り早く答えを示す人や調査・研究が求められてもいる。しかし、こんなに「激変」し、こんなに「見えなくなった」時代には、どんなに手間がかかろうとも、そのレイヤーの1枚1枚をきちんと見ていかなければ、事態はもっと分からなくなってしまうだろう。(本書「まえがき」p.15)

本書が出版されたころ<食DRIVE>調査は、広告会社の行う食マーケティングにも使われていたが、実は当初より現代の家族や家庭を調べる調査だったのである。なぜなら、食のマーケティングを行うにしても、私たちはいまの家族の実態を余りにも知らないと思ったからである。(本書「文庫版あとがき」p.283)

ある商品の購買行動とか、購買理由とか、購買意向とか、ブランドとか、プロモーションとか、価格とか・・・。これら、経営学や商学におけるテーマも確かに大切だと思います。ただ一方で、社会学で行われているような、もっと大きな変動を捉えておくことが、以前に増して大切な時代になっているようにも思えます。一方で効率も、とても重視されるので、背反してしまうのが厄介なのですが・・・。

そういえば、本書の付論として、いまの食卓の状況をみると世代が関係しているのではないかという仮説を提示しています。1960年前後生まれと1968年前後生まれのあたりで、断層が見られ、これは家庭科の学習内容の変更と符合するということです。
この仮説が正しいかどうかは別として、「世代」という視点も、いまの社会を分析するには有効な視点ではないかと考えています。
(「世代」に関しては、別の本でさらに詳しく書かれていますので、そちらで紹介します)

◆そして、いわゆる“アンケート調査”は・・・

そして、この本で強く打ち出されているのは、いわゆる“アンケート調査”への懐疑です。
著者は、つぎのように書いています。

<食DRIVE>から得られる結果で見逃せない重要なポイントに、生活者がアンケートやインタビューに回答する「言っていること」と実際に生活場面で「やっていること」との間には無視できないほどの乖離があり、それが年々大きくなっているという事実がある。しかもそれは、若い層ほど顕著になってきている。(本書「第7章 言っていることとやっていることは別」p.245)

たとえば、「手作り派」と答えている主婦の食卓が昔の考え方でいうと「手作り」とは言いがたいものであったり、「味にうるさい」「グルメ」という言葉も昔の本格志向や本物志向とは異なる、という事例が多く紹介されています。
ところで、たとえば「麻婆豆腐」をCook-Doのような合わせ調味料を使って料理するのは「手作り派」でしょうか? この本では否というスタンスのようです。もしかすると、この考え方自体が、すでに一般的でない可能性もありますよね。よくある、ことわざや四字熟語の誤認の問題のように。
このように、質問者と回答者の言葉の意味、コードが異なっている可能性があるという点も、リサーチをする人間は心に留めておかなくてはいけない大切なことです。つい、自分の基準が世間の基準だと思ってしまうので。というかあまりにも当たり前なので、思うことさえしないでしょうが。どのような文脈の元で言葉を解釈しているのか、使っているのかまで吟味しないと、真のインサイトにはたどり着かないことが増えたように思います。

著者は、さらに言います。

マーケティングリサーチにおいては、「とりあえずアンケートをとってみれば、何かがわかるんじゃないか」「アンケートでこう出ているんだからきっとそうなんじゃないか」というような安易な姿勢ではものごとを判断できなくなっている。調査にも、このような人々に対応した高度な技術や設計、そしていままで以上の深い洞察力が要求される時代になっているということだろう。(本書「第7章 言っていることとやっていることは別」p.257)

そのとおりだと思いますし、このように考えてくれる方が一人でも増えると、世のリサーチ会社も、もっと仕事が増えるのではないかと思うのですが。。。
(いや・・・、もしかしたら、だからこそリサーチ会社は頼られなくなったのか?。。。)

このように、この本はいろいろなことを考えさせてくれました。実は、もっと考えることはあったのですが、このblogの本題ではないので、ここでは触れません。
興味をもたれた方は、一度、読んでみてください。面白いと思うか、腹を立てるかは、あなた次第ですが。。。

PS.
興味を持った方は、同じ著者のつぎの2冊もどうぞ。
(とくに、『普通の家族がいちばん怖い』のAmazonコメント欄を。いい評価と悪い評価が見事に分かれています・・・)

“現代家族”の誕生―幻想系家族論の死 “現代家族”の誕生―幻想系家族論の死
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2005-06

普通の家族がいちばん怖い―徹底調査!破滅する日本の食卓 普通の家族がいちばん怖い―徹底調査!破滅する日本の食卓
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2007-10

(あとがきによると、この年末にも続編が出ることになっているようなのですが・・・。まだみたいですね~2009/12/18現在)

【追記:2010/2/21】
新刊が出版されていました。
今回は、「食卓の写真」が多く掲載されているので、ビジュアルで状況を確認できます。

家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇 家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2010-02-19

『最新マーケティング・リサーチがよーくわかる本』

図解入門ビジネス 最新マーケティング・リサーチがよーくわかる本―市場の因果関係を読み解く (How‐nual Business Guide Book) 図解入門ビジネス 最新マーケティング・リサーチがよーくわかる本―市場の因果関係を読み解く (How‐nual Business Guide Book)
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2009-11

前の2つのエントリー( こちらこちら )で、広く社会調査という視点でのエントリーをしました。
社会調査の方法論としての考え方を学ぶことが重要では、ということで。

が・・・
とはいっても、やはりマーケティング・リサーチにはマーケティング・リサーチだからこその知識や考え方が必要であることも、また事実で。。。
そのようなときには、この本をどうぞ。

ただし本書は、著者も「はじめに」で書いてあるように、「入門書」です。はじめてマーケティング・リサーチを学ぼうとする人や、もう一度基礎を復習しようとする人々を対象としています。
ですので、もくじも以下のようにオーソドックスに、リサーチの実務に沿った内容になっています。

第1章 マーケティング・リサーチの役割
第2章 企画
第3章 実査
第4章 集計・分析
第5章 調査報告
第6章 リサーチ・ソリューション
(第6章は、CPテスト、ブランド診断調査、顧客満足度調査について書かれています)

内容も、当然入門者や初心者向けのもの。しかし、視点には共感できる記述が多く含まれています。それはきっと、

本書は、特にこの原因と結果の関係を読み解くマーケティング・リサーチの方法の理解に焦点を当てた入門書です。なぜなら、因果関係の解明は、科学としてのリサーチの基礎中の基礎であるにもかかわらず、未だにリサーチャーの間に広く、深く浸透していないと思われるからです。さらに重要な点は、この因果関係思考法の欠落が、課題解決や提案力のアップといったリサーチの応用力の育成を妨げていることです。
(本書 p.18)

という考え方の元に書かれているからだと思います。そして、とても共感できる考え方です。
(だからでしょうか・・・、私がリサーチ研修のために作成している資料の内容と似たような記述やチャート、チェックリストが多くあるんですよね。もしかして、どこからか入手しました?、と思ってしまうくらいに ^^; )

さて、皆さん、以下の問にどのくらい答えられますか?
すべて答えられる方は、本書は必要ないでしょう。きっちり答えられないものがある方は、本書を手にとってみてもいいかも?・・・

  • 一般に、標本誤差を半分にしたいとき、標本数は何倍にすればよい? →p.38
    (「標本誤差」がわからないでは、お話になりませんが・・・)
  • 新製品の会場テストにおいて、「対象商品カテゴリー使用者」という条件で集めた対象者は、代表性という面で、どのように考えればいいでしょうか? →p.43
  • なぜ世論調査では、いまだインターネット調査が主流の調査方法として使われていないのか? (「抽出フレーム」という言葉を使って説明すると?) →p.80
  • たとえば、「店内でのサンプリング効果」を測定する場合の実験デザインは? (どのような方法が考えられ、どのようなメリット・デメリットがあるか?) →p.85
  • では、製品テストでのテスト方法は? →p.91
  • クロス表で%のベースとなるのは、原因となる変数?、結果となる変数? →p.126
  • 実態把握を目的とした調査の報告書は、結果一覧の報告だけでいいのか?→p.140
  • ブランド診断の場合、イメージ評価項目を考える視点は? →p.172

いかがですか?
著者は、これまでメーカーやリサーチ会社で、マーケティング・リサーチの実務を経験された方ですので、実務の現場に沿った内容で記述されているのが、本書のよい点であるといえます。
これまでの類書に満足できなかった方、著者のスタンス(因果関係の重視)に共感する方は、一度、本書を手にとってみてください。

さらに、本書の関連HPもありますので、そちらも ↓ どうぞ。
本書では触れられなかった内容についても、書かれているみたいですので。

みんなのMR.COM

(実は、著者の岸川さんも、このblog がご縁で知り合いになることのできた、おひとりです。本書の執筆についての裏話についても、おうかがいしましたが、ここでは触れずにおきます。本を書くのもたいへんだな、ということはわかりましたが、でも、本、出したいなとも思います。。。)

『社会調査論』

社会調査論 社会調査論
価格:¥ 2,730(税込)
発売日:2009-09-24

前のエントリー(「社会調査学科」?!)と関連して。
少し前に読んで、「これは紹介しないと」と思っていた本です(ただ、売れてなさそうなんですよね、Amazonのランキングでは・・・。仕方ないとも思いますが。。。)

実はこの本、1998年に出版されている ↓ の本の改訂版です。
(タイトルが変更になっていますが、理論的な部分はほとんど同一、事例的な部分がほとんど改定、という内容になっています。前書をお持ちの方は、内容を検討してから購入してください)

見えないものを見る力―社会調査という認識 見えないものを見る力―社会調査という認識
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:1998-09

「社会調査を学ぶ本質は、その方法論を学ぶことにあるのではないか」というようなことを前のエントリーで書きました。
しかし、世の中にある多くの社会調査の本は、サンプリングの方法や調査票の作り方、あるいは集計や統計といった「テクニック」について記述しているものがほとんどだと思います。
(少し話がそれますが、最近のビジネス書のコーナーに行くと、「○○しなさい」「○○せよ」「○○術」「○○力」といったタイトルの本があふれています。個人的には、このような傾向はいかがなものかと思っていました。テクニック~というかノウハウといった方が正しいかも~ばかりを身につけても、本質的な理解ができなければ、意味はないと思うのですが。。。)

そこで本書。この「社会調査の本質」について考えさせてくれる数少ない本だと思います。
まずは、もくじを紹介。

Ⅰ部 社会調査の方法
 1章 問うということ―問題の組織化
 2章 対象を設定する―単位と全体の構成
 3章 データの収集―新しいテクストづくり
 4章 データの処理―データベースの構築
 5章 データの分析―比較から説明へ
 6章 書くということ―分析の再組織化

Ⅱ部 社会調査の問題
 7章 社会調査と社会認識
 8章 具体的な知・抽象的な知
 9章 仮説が生まれるとき
10章 社会調査がつくる「現実」

Ⅲ部 社会調査の実践
11章 方法論の歴史と想像力
12章 日雇い労働現場のフィールドワーク
13章 住まいという場を読み解く
14章 犯罪を減らすためになにをどう探るか
15章 地域社会に広がる社会関係の網
16章 格差や不平等をどうとらえるか
17章 「所有」と「自然」の発見

たとえばⅠ部の内容は、これまでのよくある社会調査の本と同様に見えるかもしれません。しかし、データの収集法を定量・定性とは分類せずに、「観察による/対話による/記録・資料による」という3つで整理しています。その心は本書を読んでいただくとして、個人的には定量・定性という分類よりも、こちらの整理の方がしっくりします。このように、単純にテクニックについて語るのではなく、その考え方をふまえて記述しているのが本書の特徴です。

このあたりについては、「はじめに」での以下の記述に想いが込められているのではないでしょうか。そして、この記述には強く賛同しますし、このような考え方が根底にあるらこそ、本書の価値があるのだと思います。

技法の活かしたかを学び、理論枠組みや思想の使い方を学ぶことは確かに重要である。しかしながら、社会への想像力をそのなかで養い、社会調査の解読力と批判力とを身につけることの方が、さらに大切である。だから、この方法と方法論の書物が伝えようとしているのは、「成果」や「結果」として認められた正解ではない。知るという過程を自分で歩もうとするとき、「力」となりうるであろう、問い方であり、疑い方である。
(本書p.ⅳ「はじめに」より)

そして、本書で一番読んで欲しいのは「Ⅱ部」です。
認識するとは何か、実証主義と解釈主義の問題、理論と経験の問題、仮説、アブダクション、グラウンデッドセオリー、予言の自己成就の問題、などが取り上げられています。
いずれも、調査やリサーチを行なっていく上で、直面する課題だと思います。このあたりを理解してリサーチを行なうのかどうかで、その解釈も異なってくる問題でもあるでしょう。
これ以上詳しいことを書こうとすると、引用だらけになってしまうと思うので、ここでは「お勧め!」ということだけを書いて終わりにしようと思います。

決して、簡単で、読みやすい本ではないです。具体的なテクニックやノウハウが知りたいのなら、もっとよい本があると思います。
しかし、あるていど調査やリサーチに携わった人や、ふとリサーチに疑問を感じることがある人が、いま一度リサーチについて考えるための一冊として、読むべき本だと思います。
(それと、大学院で研究をしたい方も、ぜひ)

「社会調査学科」?!

萬さんからコメントで、つぎのようなリクエストをいただきました。

奈良大学に日本初の「社会調査学科」ができるそうですね。
この話題についてのご意見をお聞かせ下さい。(2009/12/8)

少し遅くなりましたが、「社会調査学科」についてのエントリーを。

◆奈良大学・社会学部・社会調査学科とは

まず、ご存じない方のために「社会調査学科」についての紹介を。
「社会調査学科」は、奈良大学・社会学部に開設されます。これまであった「現代社会学科」からの名称変更のようです。

奈良大学・社会学部・社会調査学科HP

とくに、学科紹介のために作られている下記のページは、ぜひご覧ください。なかなかよくできたコンテンツだと思いますので。(ただし、全部みるのには少し時間が必要かも・・・)
とくに、STAGE1~3は、社会調査を理解するために、よい内容だと思います(マーケティング・リサーチについても、触れられています)。

What is 社会調査学科? 「社会調査学科はおもしろい」 (奈良大学HP)

◆「リサーチはツール」だけど・・

さて・・・
では以下で、「社会調査学科」についてのコメントを。

マーケティング・リサーチに限らず、調査についてよく言われることとして「調査やリサーチはツール」ということがあります。
たとえば、今回の「社会調査学科」について書かれたblogをみてみると(ほとんどないですけど・・・)、「調査は手段であって、望まれているのは調査をしてそれをベースに実行する人。だから、手段としての社会調査学科がこれまでなかったのもあたりまえ」という疑問を呈している方もいらっしゃいます。
確かに、調査やリサーチの知識や技術だけで問題を解決することはできないですし、問題解決を実行をするには、さらに様々な他学問の知見を持ち込まないといけないということは事実だと思います。
そして、このような「調査やリサーチはツール」という位置づけだからこそ、これまでも「社会調査」は社会学や経営学、商学のひとつのカリキュラムとして設定されていたのだと思います。
「ツールとして使いこなせればいい」ので。

しかし、ほんとうに「社会調査」で学ぶべきことは、ツールとしての理解でしかないのか?
実際に実務をしていると、さらに社会調査を理解すればするほど、これは単なるツールと捉えてはいけないのでは、と思うようになっています。
とくに、社会調査の方法論(サンプリングの方法とか質問紙の作り方、といったテクニックのことではないですよ)は、どんな職業においても必要な考え方ではないかと思っています。
問題の本質を捉え、仮説を立て、それを操作可能な変数に置き換え、正しい情報を正しい方法で得、情報を分析し、問題への解や、あらたな理論を創出する方法論、これが社会調査を学ぶ本質ではないでしょうか。
そして先にも言ったように、このような方法論は、どんな職業においても、もっといえば社会生活を営む上でも、必須のものではないかと思っています。
極論すると、大学の1年次で、すべての学生が学ぶべきもの、ではないかとも。

これほど大きな視点で考えなくても、これだけ様々な情報が氾濫している社会においては、「正しい情報を得る方法」「情報を判断する方法」を学ぶだけでも、かなり役立つのではないかと。

こういった視点から考えると、あえて「社会調査学科」ではなく、すべての大学で、すべての学生が、「社会調査論」の基礎を学ぶことこそが重要なのでは、と考えています。
(ほんとは、大学というところは、こういう研究の方法論を学ぶべきところのはずですよね。。。いまでは、大学院にその役割が移っているようにも感じますが)

ただ、このような考え方の端緒を開いたのではないか、という意味合いでも「社会調査学科」はおもしろい学科だと思いました。(「教養学部」という、やはりよくわからない学部を卒業した人間ですので、もともとこういった考え方への志向性が強かったというのもあって・・・^^; )

このあたりの考え方は、学科紹介でも記されていると思いますので、長いですが引用させていただきます。

高齢社会や環境問題、不況や雇用の不安。現代社会はさまざまな問題を抱えています。これらの問題の原因や背景は複雑に絡まり合っていて、「できごと」を表面的にながめているだけでは状況を正しく理解することも、解決策を見いだすこともできません。

複雑化する現代社会を生き抜くための技術。
それは、情報をいかに「収集」し「分析」し「活用」するか、という技術です。
これまで、情報武装といえば「情報技術(IT)」ばかりが注目されがちでした。しかし情報技術を活かすためには、情報そのものの「質」が非常に重要。どうすればそれらの技術を総合的に活用できる人材を育てることができるか。奈良大学の答えは「社会調査技術と情報技術の融合」。
それが「社会調査学科」です。

しかし、いくら優れた技術を身につけることができたとしても、社会に対する深い洞察力や、「おもしろいこと」をかぎ分けるセンスがなければ宝の持ち腐れです。
情報の収集・分析・活用のどの場面でも、具体的な理論を活かせてこその技術。
奈良大学は情報学・社会学・文化人類学・経済学・経営学を専門とする教員が、理論的な学びをサポート。知識を現実の社会で応用していく力をブラッシュアップします。

実際に課題をみつけ、実際に社会調査に取り組む実践的教育を通して、幅広い理論と問題を見つけ出す鋭いセンス、深い洞察力をもって社会に切り込んでいく鉄壁の武装を。
奈良大学・社会調査学科HP 「学科紹介」より)

そして、実際のカリキュラムも、1年次で社会調査のベースとなるもの(文化人類学も必須というのもおもしろいですよね)を学んだ上で、それぞれの興味で社会学、経営学、情報学といった専門性を深めていく過程になっているのも、いいカリキュラムだと思います。社会調査の方法論をベースにしたうえで、それぞれの専門領域の課題に向き合うことができるので。

蛇足ですが・・・
これらを、奈良、という多くの文化財と接することができる環境で勉強できるのもいいなと、個人的には思います^^;