日別アーカイブ: 2009-11-06

“「『新聞は必要』91%」の波紋”を考える

またまたSurveyMLでの萩原さんの投稿がネタ元です。。。

元記事は見ていないのですが、読売新聞にて「『新聞は必要』91%」という調査結果が発表され、はてぶで波紋を呼んでいるという内容のコラムです。(このコラムが、「あらたにす」のHP内で読めることも画期的だと思いますが)
前回の、世論調査論の続編的な位置づけで、このコラムを読んでみたいと思います。

まず、大元の記事はこちらです ↓ 。

「新聞は必要」91%…読売世論調査 (YOMIURI ONLINE:2009/10/14)

この記事についての、はてなブックマークがこちら ↓ 。
世間の調査についてのスタンスの一端がうかがえます。

「新聞は必要」91%…読売世論調査 (はてなブックマーク)

このはてぶに対するある個人の解説?、反論? がこちら ↓ 。
おそらく調査マンだと思いますが、この内容は。

はてな匿名ダイアリー anond:20091016123352 (2009/10/16)

そして、これら一連の動きを整理しコメントしているのが、標題の“「『新聞は必要』91%」の波紋”です。

「『新聞は必要』91%」の波紋 (歌田明弘、あらたにす内コラム「新聞案内人」:2009/11/2)

歌田氏のコラムには、いくつかの論点が含まれています。調査論に関すること、ネットユーザーに関すること、PRに関することなどです。
それぞれに、考えなければならないポイントだと思うのですが、個人的に共鳴したのは、以下の部分です。

調査の詳細がわかると、なぜ高い数値なのかの推定もできる。詳しいデ ータを見れば見るほど、当初の「ウソくさい」という思いは(完全に払拭 できるわけではないが)薄らいでいく。少なくとも「『新聞は必要』91% 」というタイトルのもと、わずかばかりの記事を読んだときとは印象が変わってくる。
(「『新聞は必要』91%」の波紋~歌田明弘、あらたにす内コラム「新聞案内人」:2009/11/2)

パブリシティ記事の限界だとは思うのですが、調査記事の多くは、調査サンプル全体を集計のベースとしたGT(単純集計)の数字のみを取り上げることがほとんどです。
しかしここで、前回の「誰が回答したデータなのか」という点を考える必要があります。日本人、あるいは調査対象としたい人々を正しく代表しているデータであれば、GTだけでも十分に意味のあるデータだと思いますが、そうでないならばGTにはあまり重要な意味はない。あくまで参考値と見るしかないでしょう。
(実際に、紙面で紹介されている年代別構成比は、高年齢層に偏った分布になっているようです)

ここで、データをどれだけ詳しく見ることができるか、が重要だと思うのです。
今回のテーマであるなら、少なくても、年代別の差異やインターネットの利用時間別の差異くらいは確認するべきでしょうし、このようなデータを検証していくことで、はじめて有用なデータが得られるのだと思います。
(まぁ、今回の記事はPR色が強いということで、今後の新聞をどうするかが目的ではないので、そこまで必要ではなかったのかもしれませんが)

マーケティング・リサーチを主にしている人にとっては、クロス集計はあたりまえかもしれません。。。
けれど、実際に使うデータ(とくにトップラインなど、エッセンスを報告する時のデータ)は、GTデータがメインだったりしませんか? あるいは、クロス集計の軸も性別、年齢、職業などの決まりきったものにしていませんか?
ほんとうに意味のあるクロス軸を考え出すことが、調査結果を活かせるかどうかにかかっていると思います。
クロス軸はまさに、「誰が回答したのか」をあぶりだす、あるいは「誰の回答を重視したいのか」を決める重要な視点になっているということです。

実際に、今回の読売調査でも、

調査についての発言部分は掲載されなかったが、取材を受けるさい、掲載されたよりももう少し詳しいデータも見せてもらった。それを見ると、 20歳代は30歳代以上と顕著に違っていた。
20歳代は新聞を読む時間が少なく、新聞への評価も低い。この世代は、 新聞離れが進んでいた。
(「『新聞は必要』91%」の波紋 (歌田明弘、あらたにす内コラム「新聞案内人」:2009/11/2))

ということのようです。

この調査の設問とGTデータが、こちら ↓ で確認できます。

「新聞週間」  2009年9月面接全国世論調査 (YOMIURI ONLINE)

今回の調査手法は、層化無作為二段抽出による個別訪問面接聴取法(抽出フレームが不明ですが、選挙人名簿かな?)。回収率は60.9%で、最近の訪問面接ではまあふつうでしょうか。
紙面では公表されていたようですが、せめて年代別の構成比くらいはここにも掲載してほしいものです。でないと、データをどう読んだらいいかわからない。。。

そこで、「回答者は誰か」を推し量るひとつのデータとして注目したのが「あなたは、平均して、1日にどのくらいの時間、パソコンや携帯電話でインターネットを利用しますか」への回答。「まったく利用しない」が43%に上っています。う~ん・・・、どうなんでしょう?
全国で、20歳以上だとこの程度なのでしょうか? 毎年総務省で行っている「通信利用動向調査」(平成20年版のプレスリリースは、→ こちらへ )からは、もっと高い利用率になりそうな気もします。。。
ということは、世間一般に比べ、インターネットなどをあまり使わない層の比率が高い可能性もあるのか?
(ただし、「利用」の定義がそれぞれの調査で異なっているかもしれないので、一概に比較できませんが。たとえば、プライベート利用だけなのか、会社や学校での利用も含むのかなど。このあたりは、調査票作成のポイントの話にもなりますけど)

このようなときも、インターネットの利用有無別(さらには、利用頻度別にも)でデータを見ると、GTでは歪んでいるかもしれない調査データも、ある知見を与えてくれるデータとなるのでは?、ということです。

今回紹介したコラムから、前回の「この調査の回答者は誰か?」を考えることとあわせ、データを分けてみる、まさに「分析」の重要性を理解していただければと。「分析」こそが、データの背景を考える=誰が回答した結果かを考えるひとつの重要な過程になるのです。