日別アーカイブ: 2009-01-09

「マーケティング・エスノグラフィー」

表題は『日経情報ストラテジー』2009年2月号の第1特集のタイトルです。
(本誌では「マーケティング・エスノグラフィー」としていますが、他に「ビジネス・エスノグラフィー」という呼び方もされているようですので、検索は様々にトライしてみてください。)

景気下降が止まらない。一方で、消費者の価値観は多様化、複雑化が進み“一人十色”になっている。そんななか、商品開発やマーケティングの分野で、観察やインタビューといった地道な定性調査に熱心に取り組み、成果を出す動きが出てきた。そこで本誌は「マーケティング・エスノグラフィー」を提案する。文化人類学のフィールドワーク手法、エスノグラフィーを消費者調査に活用するのだ。見えづらくなった消費者という“異民族”理解の一助になるだろう。
日経情報ストラテジー2009年2月号 もくじ紹介HP

日経系のHPでは、上記以外にも、エスノグラフィーに関してつぎのような記事も読めます。

大阪ガス、調査手法「エスノグラフィー」をサービス改善などに活用、グループ会社にノウハウ伝授し調査の外販も(NIKKEI BP/IT Pro)

ユーザー行動を深く理解する「エスノグラフィー」 2009キーワード
(NIKKEI NET/IT Plus)

ただ、少し気になるのは、「エスノグラフィー」は、どうもプチブーム的な様相を呈しているのではないかということ。本質を理解している人はどのくらいいるのだろう、という疑問も。。。
個人的には、エスノグラフィー的な発想というのは、マーケティング・リサーチのパラダイム転換ともいえるのではないかと思っています。
なぜ、いまエスノグラフィーなのか?、これまでの定性調査とは何が違うのか?、定量調査ではどこに限界があるのか?、そして実施のポイントは?・・・。これらのことをきちんと踏まえた上で、実践に向かう必要があると思います。
その意味でも、記事中の「安易な実践には反対、正しい手順を踏め」という一橋大学大学院の佐藤郁哉先生(定性調査やエスノグラフィーといえば、佐藤先生です)のコラムは、必読です。

また、直接的にエスノグラフィーについて語っているわけではないですが、下記2つのblogやHPも「なぜエスノグラフィーなのか」について、きちんと考える上で参考になります。

「明日のマーケティング:消費者調査シリーズ」(ルディー和子氏のblog)

「仮説検証の限界、新しい「知識創造」の技法」(石井淳蔵氏、プレジデント)

(わかる人はわかると思いますが、おふたりのマーケティングに対する視点はポストモダン的だと思います。これらのページを読んで興味をもたれた方は、以下の本も読んでみてください。私的には、いずれもお薦め度の高い本です。)

マーケティングは消費者に勝てるか マーケティングは消費者に勝てるか
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2005-09-01

(↑過去にこのblogで紹介してました。こちらへ⇒)

マーケティングの神話 (岩波現代文庫) マーケティングの神話 (岩波現代文庫)
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2004-12

(↑2004年発売となってますが文庫版の発売年です。最初は1993年の出版です。
それと、石井先生のコラムに出てくるM.ポランニーの本は、こちら↓です。)

暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫) 暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)
価格:¥ 945(税込)
発売日:2003-12

【PSその1】

このblogでのエスノグラフィーに関する過去記事は、こちら↓。
(2本めは直接エスノグラフィーではないですが、ちょっと近いかなということで。。。)

「ユーザーの体験を設計する」~エスノグラフィという手法(2008.2.3)

ふたたび、よいblog紹介~カスタマーバリューのフロンティア(2007.4.13)

【PSその2】

特集に気づいた時はすでに次号発売の時期で、紹介のタイミングを逃してしまったのですが・・・。

「見栄ない消費~売れたのにはワケがある」(「日経ビジネス」2008.12.15号)

も、必読の記事です。本文の中に、つぎのような一文があります。

2008年のヒット商品を読み解くと、2つの方法が見えてきた。1つは、「深堀り型」。徹底的に消費者の嗜好に従って商品を開発する。もう1つが「気づかせ型」。無意識のニーズを探り当てた商品を開発する。

景気が下降する時代だからこそ、ますます消費者を理解することが商品開発の肝になります。そして、そのためにはどのようなリサーチが必要なのか。
この記事では、いくつかの商品の開発事例が掲載されていますので、これらのケースから、さらに読み解いてみてください。