日別アーカイブ: 2007-06-11

『マーケティング調査入門』

マーケティング調査入門―情報の収集と分析 マーケティング調査入門―情報の収集と分析
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2007-04

しばらく更新をしていませんでしたが・・・。
再開第一弾は、本の紹介から(リハビリも兼ねて)。。。

最近、マーケティング・リサーチに関する新刊が多いようですが、基礎をきっちりと学びたいという方には、この本はお勧めです(少々高いですが)。
著者は学者の方なので、教科書的で少々硬い記述になっていますが、理論的なベースはしっかりしています。

まずは、もくじから。

1章 マーケティングの基礎
2章 マーケティング調査の概要
3章 定量調査の方法
4章 定性調査の方法
5章 マーケティング調査の課題
6章 マーケティング調査の進め方
7章 調査票の設計
8章 調査対象者の選定
9章 調査の実査と集計・分析
10章 統計的分析の基礎
11章 多変量解析の基礎
12章 テキストマイニングの基礎
13章 市場細分化とその方法
14章 ハイテク調査の現状と動向

このもくじでもわかるように、まず「マーケティング」についての基礎的な部分を押さえてから、マーケティング・リサーチの詳細に入っていっている、また最近のリサーチの焦点になっている「テキストマイニング」や「ハイテク調査」についても章を割いているのが本書の特徴です。

このblogでも、「リサーチャーは、マーケティング・リサーチについての理論を知ることはもちろん、マーケティングについての理解も欠かせない」ということを書いてきたつもりですが、この本の著者も「はじめに」で、つぎのように書いています。

高度の専門知識と豊富な経験で武装するリサーチャーは、マーケティング担当者(マーケター)の意思決定に不可欠な情報を提供できると期待されてきたし、成功の事例も少なくない。しかし、高度の専門性が、逆に問題の本質を隠し、決定的な失敗をもたらした事例もある。(・・・中略・・・)すなわち、専門家による調査は、成功を保証する十分条件ではない。困難な問題に直面している担当者こそが、問題解決に必要な情報を知っているのであり、自らが情報の探索・分析・解釈に主導的な役割を果たすべきである。

ここまでですと、「リサーチャーに任せるのではなく、マーケターがリサーチの知識を持って、自ら探索・分析・解釈を行え」と言っているように思えますが、続けて、つぎのように言っています。

すなわち、マーケターは、100年の歴史を通じて開発された数多くの調査・分析法の特徴を理解し、問題に応じて適切な方法を選択する基礎知識を持つべきである。この知識なしに調査を行うと無駄な結果を生むだけでなく、かえって誤った結論を導くことになる。このため、問題解決の助言者としてリサーチャーの役割は重要であり、リサーチャーはマーケターの直面している問題を十分に理解すべきである。すなわち、マーケターとリサーチャーの密接な協同(コラボレーション)こそがマーケティング調査の不可欠な条件である。

リサーチャーもマーケティングの知識をもつべきであり、マーケターもリサーチの知識を持つべきである。そして、両者が密接に協同してこそ、はじめて有意義なマーケティング・リサーチが実現するということだと思います。大賛成です。意義のある結果を得るためには、マーケターとリサーチャーが共通の問題意識や課題を、同じレベルで共有することが不可欠ですから。

この「はじめに」を読んでいただけるとわかるように、本書は「マーケター」がリサーチの基礎を学ぶことを主眼にしていますが、「リサーチャー」が基礎的な理論をマーケティングの視点を踏まえながら再度学ぶのにも、適していると思います。
マーケティング・リサーチでよく取り上げられる事例である、「ネスカフェのインスタントコーヒー価値の発見」「アサヒスーパードライの開発」「ニューコークの失敗」「花王の調査システム」「DAKARAの開発」の事例なども(ポイントだけですが)取り上げられています。

そして、巻末にある参考文献が秀逸です。
本書を読んで、もっと詳しい内容を知りたいと思ったら、参考文献を容易に探すことができるのは、とてもありがたいです。

実務家の書いた本は読みやすく身近に感じることができますが、たまにはこのような学者の書いた理論書をきちんと読むのも必要ですね。