日別アーカイブ: 2007-05-22

マーケティング・リサーチを取り巻く2題

マーケティング・リサーチに関して、気になるblog、HP、MLを立て続けに見たので、エントリー。
ひとつはクライアントサイドの問題、ひとつは調査対象者の問題です。

■マーケティング・リサーチ/リサーチ・リテラシー

いつもの「マインドリーダーへの道」さんのblogで、「リサーチ・リテラシー」といいうエントリーがありました。詳しくは、直接blogを読んでいただくとして、つぎの文章にとても同意です。

そして、実は、しばしばリサーチ・リテラシーの低さが、マーケティング企画の立案や実行上の障害となる場合がある点です。(私自身、過去なんども経験してきました・・・)
もちろん、すべてのマーケターが、調査の具体的なノウハウ・テクニックを習得する必要はありません。
ただ、調査の意義や、基本的な調査・分析手法の考え方、データの見方といった最小限のリサーチリテラシーを持っておく必要性は高いんじゃないでしょうか?

このblogをはじめたのも、まさに同じ問題意識からでした。
リサーチにお金をかけることを疎ましく思っている人が少なくない、また、リサーチを実際に行っている人のリサーチに対する理解力が低下している、こんな危機感は今も強くあります。(「リサーチを行っている人」は、いわゆる調査会社に所属している人も含めます。こちらの方が、問題はより一層深刻になりますが・・・)

「マインドリーダーへの道」さんが引用している、石井先生の記事はこちら↓になります。

成長持続の鍵「マーケティング・リテラシー」
~独立したリサーチ部門をもたなければ、マーケティングの経験を長期的に蓄積することは難しい。筆者は、「マーケティング・リテラシー」を改善する手法を提案する。

この提案の骨子は、「専門部署としてのリサーチ部門を持つこと」だと思うのですが、企業のマーケティング・リテラシーの問題点として、つぎの3つを上げています。

  • やるべきリサーチをやらずにすます
  • 不明確なリサーチ課題の下にリサーチが実施される
  • 「リサーチ標準」を定着させることができない

この指摘も、的を射たものだと思います。よく出くわすことです・・・(残念ながら)。
もしも、読者にリサーチ担当者の方がいらっしゃったら、「リサーチ専門部署」を持つかどうかは別として、このあたりの問題点は常に認識をしながら、リサーチに取り組んでいただければ、よりよいリサーチの実施に繋がると思いますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

■「調査協力依頼文のモデルについて」(JMRA)

日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)のHPで、

「調査協力依頼文のモデルについて」が策定されました(2007.5.21)

というWhats newが出ています。このモデル策定の背景として「はじめに」で説明されている文章をみると、

2005年-2007年期の(社)日本マーケティング・リサーチ協会 倫理綱領委員会は、「個人情報の保護に関する法律」(以下「保護法」)および「JIS Q 15001:2006 個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」(以下「JIS」)に対応した調査協力依頼状モデルの作成を課題の一つとして与えられた。
モデルは、調査会社が調査対象者から個人情報を取得する場合に、保護法やJISが求めている明示あるいは通知すべき事項を満たす内容でなければならないが、さらに、マーケティング・リサーチ綱領の定めを満たし、できれば、(社)日本マーケティング・リサーチ協会のPRも含めたいとの要望があった。

との事なんですが・・・。
もっと、「調査対象者は何に不安を感じているのか」「なぜ調査協力依頼文が重要なのか」というような視点からの言及もしてほしかったなという気もするのですが。これでは、法律やシステム上必要だから作りました、ってだけに聞こえてしまいます(通達の意味合いが強い事務的文章かもしれないので、あえて考え方を入れる必要もないのかもしれないですけど・・・)。

それはさておき、JMRAとして、このようなモデルを提示することはとても重要なことだと思います。調査環境が悪化し調査協力を得ることが難しい状況の中では、少しでも調査対象者に対して、安心感を持ってもらうことは必要ですから。
で、あるMLでこのことに対し、素朴な疑問があげられていました。

「そもそも、この(調査)会社が言っていることが信用できるのだろうか?」という疑問を解消できるのでしょうか?

というような趣旨だったと思います。たしかに・・・。

いくら、個人情報を守ります、このような趣旨で調査への協力をお願いしますと言っても、そもそもにおいて、市場調査って何だ?なんで自分が協力しないといけないのか?だいたいこんな会社聞いたこともない!という状況だと、なかなか調査への協力は得られないですよね。
前のエントリーで紹介したようにインテージさんやマクロミルさんが上場を果たし、企業本も出版されるまでになり、またいろいろな調査会社さんが調査結果をリリースするようになり、少しは「市場調査」というものへの理解は得られるようになったかもしれませんが、世間一般では、まだまだ・・・。
JMRAのHPでも、「調査協力者」というページをつくり(しかし、「調査協力者」って偉そうですよね・・・。「調査にご協力いただく方へ」とか、もう少し言いようもあるように思うんですけど)、

各種調査に御協力いただいた方、調査に興味をお持ちの方のページです。
マーケティング・リサーチへのご理解を深めていただける情報をご提供いたします。

とPRも行っているようですが、内容はまだまだ感もあり。。。

「統計調査の民間開放・市場化テストに関する研究会」の報告書にもあったように、

さらに、統計調査を円滑かつ適切に行うためには、調査対象者の理解と協力が不可欠であり、今回の取組を契機として、民間開放の趣旨に加え、統計の意義や重要性について改めて国民に理解されるよう、より一層の広報を適切に行っていくことも重要である

ということを、もっと推し進める必要があると感じます。

協会として、新聞一面にPR広告を出すとか、「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」「プロフェッショナル」などで取り上げてもらうようにテレビ局に働きかけるとか、もっとマス広告の力も活用すべきかもしれませんね(先立つものの問題もありますが・・・)。HP上での啓蒙では、所詮、興味がある人向けにならざるを得ないので。
あるいは、インテージさんやマクロミルさんのようにお金を持っているところに、業界リーダーとしての活動をもっとがんばってもらうとか。。。そういえば「宣伝会議」という雑誌では、よくマクロミルさんや楽天リサーチさんなどの広告を見かけますね。でも、クライアントへの訴求ばかりでなく、調査対象者の理解を得るような訴求も、もっと行っていただければと思うのです。

マーケティング・リサーチを取り巻く課題を2題、ご紹介しました。
本格的にマーケティング・リサーチが始まって50年。この50年という期間が短いのか、長いのかわかりませんが、マーケティング・リサーチへの理解はまだまだだな、と思いました。
このような状況を打開するために、このblogが微力ながらも力になるといいのですが。
(という想いのもと、できるだけエントリーをするように心がけます。。。)