日別アーカイブ: 2007-03-09

4分の1がIE7ユーザー?、半数がCM見て検索?

「大西宏のマーケティングエッセンス」さんのblogで、『不満のない人が多いからといって、良い評価結果とはいえない』というエントリーがありました。

こういった調査の場合、世論調査ではないので、「不満」と「満足」のどちらが多いかで評判を決めるということにはなりません。いまどき、不満が少ないというのは当たり前であり、むしろどれだけ満足度を上げていくかが鍵なので、「満足」とズバリ答えた人の比率が重要になってきます。その結果が19.3%というのはちょっと微妙な結果で、常識的には、ややパワー不足の感が否めません。「やや満足」も19.3%であわせても満足派は38.6%という結果です。

このデータ解釈、まったく同意です。やはり、現場で数字を見ている人の感覚は、違いますね

で、今回のテーマとしてあげたいのは、もう少し別の視点から。
満足度の解釈もそうなのですが、そもそも素材として取り上げられた「全体の約4分の1はすでに IE7 ユーザー」が、どうなのかと。このblogへのアクセスでは、IE7は10%を少し超える程度。自分の感覚がすべて正しいなどというつもりはありませんが、どうも実態とそぐわないのではないかと感じて仕方がない・・・。

で、元リンクを確認してみると。
調査対象者を見てください。つぎのようになっています。

調査対象は、民間企業に勤務する20代から60代の男女330人。男女比は男性82.7%、女性17.3%。年齢別では、20代13.6%、30代47.0%、40代30.9%、50代7.3%、60代1.2%。地域別では、北海道1.5%、東北2.7%、関東34.5%、甲信越1.2%、東海30.0%、北陸1.8%、近畿18.2%、中国5.2%、四国1.8%、九州沖縄2.7%。

男性が8割。さらに30~40代が8割近い。
もしも、このリリースにタイトルをつけるとすると、「30~40代を中心としたビジネスマンでは、IE7ユーザーが4分の1」が、許せる範囲で、決して「全体の4分の1」ではない、と思うのですが、いかがでしょうか。

ついでなので、最近みたデータで、どうなのかなと思ったものを紹介します。
日経MJの2007.3.7の2面の記事、タイトルは「CM見て検索、半数が経験」というものです。
そこで、調査方法と対象者を確認すると、手法はインターネット調査、対象者は「週1回以上テレビを視聴する20代~50代の男女2000人」とあります。
ふむふむ・・・。
ポイントでも、「ネット利用者の」という言葉を使ってますし、上記の「全体の」とは違うので、ネット利用者ならこんなものなのかなと思ったのですが、問題はそのネット利用頻度。
平日プライベートの利用時間が、1時間前後が29%、2時間前後が24%・・・。
あれ、残りの半分は?と思うと、どうも、1時間未満と3時間以上が入っているよう。具体的な数字がないので、なんともいえないところではありますが、「平日」の「プライベート」利用で、2時間とか3時間ってどうなんでしょう?かなりのネット・ヘビーユーザーといえるのではないでしょうか?
感覚でものをいってもいけないので、ネット利用時間に関する調査がないかと探してみると、2005年のNHK国民生活時間調査で、つぎのような結果が(元資料はこちらです)。

今回の調査結果では、平日の国民全体のインターネットの行為者率は13%、その人たちの平均時間は1時間38分でした。そこで年層を20~50代に限定し、1時間30分以上インターネットをする人を「長時間利用者」として分析し、自由行動としてのインターネットを長時間する生活とはどのようなものかを考察してみました。

平日のネット利用率が13%、平均時間は1時間38分・・・。
となると、この日経MJの記事の調査対象者は、かなりのネット・ヘビーユーザーとなり、とても「ネット利用者」を代表していると言えないのではと思うのですが。。。
さらに、NHKの資料では、つぎのような見解も述べられています。

  • インターネットを長時間する人は仕事や家事などの拘束時間が短く、その結果自由時間が長い。つまり、インターネットを長時間するだけの時間的な余裕がある。
  • 自由時間が長い人がインターネットを長時間する傾向があるため、インターネットを長時間する人は、結局テレビも長時間見ている。

これをあわせて考えると、自由時間の多い人が、テレビを見る時間も、ネットをする時間も多く、そういう人は「CMを見て、半数が検索」、というのがどうも真実のような気がしてきました。日経MJの記事をよく読むと確かに、

さらに、テレビ視聴時間が長い層でインターネット使用時間も長い傾向がある。これはこのような層が平日に比較的プライベートの時間が多いことに加えて、テレビを見ながらインターネットを使っている可能性が高いことが考えられる。このような層に対して「ウエブ連動広告」が効果的に作用していることが考えられる。

と書いてありました。
だとしたら、「(自由時間の多い)ネットヘビーユーザーでは、CMを見て検索、半数が経験」という見出しをつけてもらわないと。この見出し=「CMを見て検索、半数が経験」では、ミスリードする可能性が高いでしょう。

それと、記事ではさらっとしか触れられていませんが、つぎのようなデータもあります。

「続きはウエブで」と誘導するテレビCMでは
 →WEB検索率=46%、商品購入経験率=18%
URLを知らせるテレビCMでは
 →WEB検索率=44%、商品購入経験率=22%
テレビCMを見て気になった商品を検索では
 →WEB検索率=64%、商品購入経験率=52%

・・・。
え?!、「続きはウエブで」よりも、「気になった商品を検索」の方が検索率も、商品購入率も高いじゃないですか。
ということは、「続きはウエブで」とか「URLを知らせる」ということをやるよりも、CM自体&商品自体の魅力を高める方が、検索率も購入経験率も高くなるということでは?・・・。

『つっこみ力』のエントリーでも書きましたが、データはこのように、分析者(記者?)の意図が反映されるものなのです。とくに、見出しだけで判断するのがいかに危険なことかがお分かりいただけると思います。

それと、もうひとつ。インターネット調査のデータを読むときは、「答えている人が誰か」ということを、きっちり確認し頭に入れてデータを読まないといけない。とくに、PCやネット関係の調査のときは、要注意です。(このあたりのことについては、寺子屋でも近々テーマとして取り上げるつもりです。)

PS.
だからといって、「ネット調査はダメだ」などというつもりは毛頭ありません。
要は使い方と、データの読み方です。