日別アーカイブ: 2007年2月14日

仮説探索型リサーチ(調査)

owl さて、今日は「仮説探索型」のリサーチについて。
P夫くん、仮説探索型のリサーチって、どんな調査だったかな?

P夫 えーと・・・。あるテーマに対しての仮説を開発したり、消費者の本質・インサイトを発見したりという目的のリサーチ。実態の把握ではあるけど、実態把握型よりはテーマを絞り込んだ深いリサーチ。

owl まんまコピーだね^^;、意味わかってる?

P夫 なんとなく・・・

owl どこがわからない?

P夫 「実態把握ではあるけれど」というとこ。前の実態把握型リサーチと、どう違うのかと・・・。

owl そうだね・・・。
実態把握型リサーチって、とにかく今の現状を把握するということが目的だから、わりと広いテーマで、浅く聞かざるを得ないことが多いんだ。認知率も知りたい、認知経路も知りたい、利用状況も知りたいし、どこで買っているのか、どれくらいの頻度や量で買っているのか、なんで使っているのか、なんで使っていないのかも知りたい。そもそも調べたい商品やサービスに対して、どんな期待や不満を持っているのかも知らないといけないし、ブランドイメージも必要だな・・・。
てな具合に知りたいことが、いっぱいあるよね。そうなると、質問の量もすごいことになって、詳細までは突っ込んで聞けないよね。
そもそも、実態把握型リサーチの目的は、市場の実態を把握して、変化の兆しをつかまえることが主眼だから、そんなに突っ込んだ質問もいらないともいえるけど。

P夫 それは、わかります。確かに、商品開発のときの最初の調査って、あれもこれも入れて、調査会社の人に、「質問量が多すぎて、回答者の負担が大きすぎます。回答が適当になる危険性がありますよ」って言われることがあるから。
でも、それがわかっても、じゃあ「仮説探索型リサーチ」がどんなことをするかが、いまひとつぴんとこないんです。。。

owl うん、それじゃ前回も使った自動車を例に考えてみようか。
実態把握のために自動車の販売台数をみると、去年は登録車の販売台数がずっと前年割れしていて、軽自動車の販売台数が伸びているということがわかった。では、なんで軽自動車ばかりがこんなに売れているのか?
Q子さん、どう思う?

Q子 えーと。軽自動車の方が、小さくて、かわいいし、いろんな色があるし。i(アイ)とか、これまでになかったようなデザインの新車も出てるみたいだし。
それと、日本の道路は狭いし、渋滞しているから軽自動車の方が走りやすい、とか?

owl そういう面もあるだろうね。P夫くんは?

P夫 単純に、維持費が安いからじゃないですか?税金とか安いみたいだし。燃費もいいって聞くし。

owl おそらく、「あなたが軽自動車を購入した理由はなんですか」って質問項目でアンケート調査をすると、いまQ子さんやP夫くんがいったような回答が多いんだろうね。
これが実態調査の結果だとすると、では、もっと買ってもらえる登録車を作ろうとしたら、どんな車を作ればいい?

Q子 税金が安くて、燃費がよくて、かわいいくて、狭いところでも楽な車。

owl そういうのを、もぐらたたき的解決っていうんだけど、それでは商品の開発は無理^^;
そもそも税金なんて、国が決めていることだから、メーカーにはどうにもできない。

P夫 じゃあ、どうするんですか?だって、アンケートでそういう答えが出てきてるんですよね?

owl そこで、仮説探索型リサーチが必要になってくるんだ。消費者の意識に上っていること、聞かれたら答えるられることは、さっき君たちが言ったことで正しいと思う。けれど、実際に車を買う時や使う時のことを考えてごらん。きっと、もっといろんなことを考えていると思うよ。
その、「ほんとうのところ」を探るのが、仮説探索型のリサーチになるんだ。

Q子 でも、「ほんとうのところ」って、どうやって調べるんですか?ふだんは、あまり考えていないことを聞くんですよね?難しそうですけど。。。催眠術にかけるとか?^^;

owl 催眠術は、とっぴ過ぎるけど・・・。
確かに、仮説探索型リサーチは難しいと思う。ただ、今、もっとも必要とされているのも、実は仮説探索型リサーチだったりもする。「調査は使えない」というのも、この裏返しだと思うよ。
前に、このblogでも紹介したコカ・コーラの人が言っていた言葉があるよね。

『生活者自身も理解・説明困難な領域に果敢に踏み込み、リサーチャー自らがコンテクスト化し、逆に生活者に気づきとして還元することが、製品開発やマーケティング戦略への近道になるからである(「新事業・新製品開発の創造的マーケティング」)』。

「インサイト」という言葉も、このblogで何度か使っているけど、これもそうだね。ほかに、「ニューロ・マーケティング」とか、「心脳マーケティング」とか、「ポストモダン・マーケティング」とか、いろいろな言葉が話題になったりしているけど、全部、「消費者のほんとうのところ」をどうやって捉えるかということを、テーマにしていると思うんだ。

P夫 そんな関連の本を、ちらちら見てますけど、結局のところ、どうしたらいいかはあまり書いていないような気が・・・。

owl そうかもしれない。たとえば、質問紙調査のように、定まった手法ではないからだろうね。
あ、具体的な方法論を期待されても困るからね。いま言ったように、いろいろな手法が提案されているし、試されているから、ここでひとつひとつについて具体的な解説はできないので・・・。

Q子 で?、どんな方法があるんですか?

owl いくつかの手法をあげてみるよ。

  • 自由回答中心のアンケート調査や日記形式のアンケート調査
  • ベネフィット・ストラクチャー・アナリシス、コンジョイント分析、因子-クラスター分析、コレスポンデンス分析やMDSなどを使ったマッピングなど、定量データを元にした分析手法
  • 投影法を応用した定性調査
  • エスノグラフィ、観察法などによる行動分析
  • 評価グリッド法、レパートリーグリッド法
  • ラダリング法
  • ZMET法

う~ん・・・、うまく整理できていない感じもするな-_-。
こういう手法もあるんだ、くらいの理解にしておいてね^^;

P夫 最初の2つくらいはなんとなくわかりますけど、あとは聞いたこともないです。。。

owl うん、たぶん調査会社に、こんな手法の調査があると聞いたんですけどできますか?と聞いて、即答できるところは、そう多くないんじゃないかな。
それだけ、仮説探索型リサーチは専門性が高いし、最近の手法だともいえるんだけど。

P夫 えー。じゃあ、こんなことをやりたいときはどうすれば?

owl P夫くんもいったように、最初の2つはそんなに新しいものではないので、まずはこのあたりからはじめるんだね。それと、投影法とか難しいことをいわずに、ふつうにインタビューとか。何を明らかにしたいかというテーマを明確にもって、設計をきちんとすれば、これらの方法でも、それなりの結果は得られると思うよ。あ、インタビューは、モデレーターも重要だけど。
他の手法を試してみたいのなら、これらをキーワードに検索をしてみれば、いろいろと研究している調査会社が見つかるんじゃないかな。ただ、さっきも言ったように、まだ実績が十分にある手法でもないと思うので、どれだけ有効な結果が得られるかはわからない、ということは覚えておいて。

Q子 でも、頼むなら、自分もそれなりに理解していないとまずくないですか?調査会社さんが提案してきたことが、正しいのかどうか判断できないですよ?

owl そう、いいとこに気づいたね^^。そういう姿勢は、忘れずにいてね。
そうだね・・・。では、いくつか参考になる本をあげておくよ、全部の手法を網羅できているわけではないと思うけど。それに、ここにあげる本を読んだからといって、すべてが理解できるということもないから。概要がなんとなくわかる、程度だと思って。

ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2002-07

これは、具体的な手法の解説をした本ではないけど、「ほんとのところ」について探索した事例が載っているので参考になると思う。とくに、ラダリングを理解するのにはいいかも。

図解やさしくわかるインサイトマーケティング 図解やさしくわかるインサイトマーケティング
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2006-09-22

「インサイト」探索を実際に行う手法を具体的に解説してくれいてる。でも、それより「インサイト」とは何かという本質の方を理解してほしいけどね。

魅力工学の実践―ヒット商品を生み出すアプローチ 魅力工学の実践―ヒット商品を生み出すアプローチ
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2001-08

いろいろな企業の人が、自社の商品の開発事例を紹介している。メールでのラダリング法とか、FAによる質問法とかの事例もある。

マーケティングリサーチの論理と技法 マーケティングリサーチの論理と技法
価格:¥ 3,465(税込)
発売日:2004-09

これは、以前にも紹介している本だけど、コンジョイント分析とか、ラダリング法についても書いているから。

心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press 心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-02-10

これは、「心理学×脳科学からのアプローチ」とうたっているZMET法についての本。ZMET法については、ライセンスがあるみたいで、どこでもやっていいということではないらしい。日本でもライセンスを取得している会社はあると思うけど。

アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実 アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2000-06

これも前に紹介しているけど。3章がとくにお勧めで、何も考えない調査がどんなに害悪かがわかると思う。インサイトに近づくための考え方や調査については、4章を。

マーケティングで使う多変量解析がわかる本 マーケティングで使う多変量解析がわかる本
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2007-01-26

ごく最近の本。主な多変量解析についての概要を理解するには、手ごろ。マーケティングの事例を使って解説しているから、理解しやすいと思う。

こんなところかな。

ただ、覚えておいて欲しいのは、どんなに手法を理解したとしても、それで「ほんとのところ」に迫れるかというと、そんなことはないということ。何度もいうけど、結局は、何を明らかにしたいのかという課題の設定がすべてだということは、肝に銘じておいてほしい。
すばらしい包丁を使えば、誰でもおいしい料理がつくれるというわけではないでしょ?それと一緒だから。

P夫 すいません、また頭が痛くなってきました・・・。

Q子 どれから読もうかな♪

P夫 まじ?・・・

owl では、今日のまとめをしようか。Q子さんの方がいいかな。P夫くんは、沸騰気味だから^^;

Q子 新しい商品やサービスを開発するには、実態把握型のデータだけでは不十分で、消費者の「ほんとのところ」を捉える必要がある。むしろ、いまは、この「ほんとのところ」をいかに見つけ出すかが重要で、手法もいろいろ開発されている。

owl そんなところかな^^