月別アーカイブ: 2007年2月

『空飛ぶタイヤ』

空飛ぶタイヤ 空飛ぶタイヤ
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2006-09-15

少しだけマーケティング・リサーチを離れて・・・。
最近、新書やビジネス系の本ばかり読んでいましたが、久しぶりにエンターテイメント系の本を読んで、これがヒット、一気に読んでしまいました。(500ページ近い、それも2段組の本なのに!)

題名をみてピンと来る人もいるかもしれませんが、実際に起こったある事故をモチーフとしたフィクションで、組織というか、サラリーマンを見事に描いていると思います。
帯には、つぎのようにあります。

マンション耐久強度偽装やエレベーター事故、いじめの事実隠蔽などのニュースを見聞きするたび、なぜ大人が責任のなすりつけ合いを何ヶ月も続けるのか、私はつねづね不思議に思っていたのだが、この小説を読んで「ああ、こういうことであるのか」と深く納得した。(中略)じつに牽引力のあるエンターテイメント小説であり、同時に、人間性を疑うような事件の多い現在への、痛烈な批判でもある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・角田光代氏(朝日新聞11/5読書欄より抜粋)

この本を読んでいるとつくづく思います。
「顧客第一」という言葉を社是・社訓にしている会社は、それこそ星の数ほどあるでしょう。ない会社を探す方が難しいくらいかもしれません。
なのになぜ、雪印、パロマ、不二家、それに損保会社・・・、同じような事件が次々と続くのか?
そして、このような事件が起こると必ず、「体制はどうなっていたんですか?、制度はどうなっていたんですか?」という質問がなされます。そして、「今一度、社内の体制を見直し・・・」という、毎度おなじみの返答が繰り返される。
なのに、なぜ・・・。

答えはやはり、「人の弱さ」なのでしょう。
「ポジション」のもつ権力の魔力、そしてポジションがあたかもその人自身の力であるかのような錯覚を与え、その力で人を従わせようという気持ちを持った人が現れる。そして、そのポジションを得ることへの執着とそのポジションを守ることへの執着が、正常な判断を無くし、顧客を見えなくし、社員を見えなくし、制度や体制を形骸化させる。さらに、ポジションをもった人に汲々とつき従うだけの人々が、判断を放棄し、顧客を見なくなる。
全体として、内向きの力ばかりが強大化して、「ひらめ」や「かます」「ゆでがえる」が大量発生していく。
いくら、組織や体制、制度をいじっても、それを運用する人が、「ポジション」という見せ掛けの力に惑わされる限りは、同じことが続く。

そして、「愛社精神」はあるのに、「愛社員心」という言葉はない。
「会社がなくなれば、社員もなにもない」という理屈はよく聞かれますし、否定するつもりもありません。けど、「社員がいない会社も存在しない」ということは、ないのか?
人は組織のためにだけ、存在しているのか?

実際、太古の昔から繰り返されていたことですから、人のもつ業なのかもしれません。
映画「墨攻」での梁王しかり。この映画もおすすめです。)

結局、このような愚かな繰り返しを断ち切るには、『経営戦略を問いなおす』でも言われていたことに行き着くのではないかと思います。
最後は、「人」です。それも、「事業観」をもった経営者の力量です。
お客様に、そして社員に支えられていることを忘れずに、そして自分たちの会社の存在意義を常に指針として、考え、行動できる、そして人を見極める力量をもった経営者が一人でも多くなることを願わずにはいられません。

沈まぬ太陽」や「クライマーズハイ」と繋がる感じでしょうか。これらの本が好きな方は、きっと、はまると思います。
(個人的には、「個人対組織」をテーマにした本や映画に弱くて・・・。「踊る大捜査線~レインボーブリッジを封鎖せよ!」を見ながら、泣いてしまったくらいで^^;)。

雪印、パロマ、不二家・・・、これらの事件がどうして起こるのか、会社とは何か、個人とは何かを考えるには絶好の書だと思います。
前回の直木賞候補作でもあり、ミステリー、エンターテイメントとしても、断然のお勧めです!

PS.
最後に、マーケティング・リサーチっぽいことも少し。
この本の中に、つぎのような文章がでてきます。

カスタマー戦略課の業績考課は、顧客アンケートによるCS、つまり顧客満足度で測定することになっている。アンケートは年4回、四半期毎の実施だ。当初からこの査定方法について「正確に測れるのか」という疑問の声が上がっていたものの、過去二回は期待値を下回り、「カスタマー戦略課なにやっている」と叱責の声があがった。

きっと、これも多くの企業でみられる光景なのでしょうね・・・。
それも、アンケートをすること自体が目的となり、満足度の数値だけが目標となり、すべての基準となる。
池井戸さんわかってるな、とニヤっとさせられました。。。

調査の目的とタイプ~整理

owl さて、これまで何回かにわけて、調査の目的とタイプについてみてきたけど、整理できたかな?

P夫 実態把握、仮説探索、仮説検証というタイプ分類については理解できたんですけど、なんていうんだろう・・・、やっぱりそんなに意識しないといけないことなのかなと・・・。

owl うん、確かに無理やり分ける必要はないのかもしれない。
ここで覚えておいてほしいことは、調査目的に沿って、いろいろな調査のやり方があり、設計するにあたって、こういう視点は欠かせないということ。そして、実態把握→仮説探索→仮説検証というサイクルを回すことが効率的なマーケティングには必要ではないかということなんだ。
けど、すでに行っているリサーチについて、これはどのタイプだと無理やりどれかのタイプに当てはめて考える必要はないよ。

たとえば、「マインドリーダーへの道」さんのblogにあった粉ミルクの事例について、考えてみようか。この事例で取り上げられた「母親は、粉ミルクの銘柄をどうやって決めるのか」についての調査は、どのタイプだろう?

Q子 『Y社市場調査課ではこの情報を検証すべく』と書かれているんだから、仮説検証型ではないですか?

owl そう、この文脈でいくと、確かに仮説検証型のリサーチと位置づけられそうだよね。
でも、「マインドリーダーへの道」さんも最後の方で書いている、『論理を大切にすること以前に、そもそも消費者が特定の銘柄(ブランド)を選好するプロセスやきっかけ、つまりは「消費者心理・消費者行動」を十分に理解できていなかったことが問題だったのではないでしょうか。』という意見に大賛成なんだよね。
つまり、この程度のことは、本来実態把握型リサーチで押さえられるというか、押さえておくべきことだと思うんだ。
そうなると、この調査の目的であった「母親は、粉ミルクの銘柄をどうやって決めるのか」ということについては、実態把握型で調査すべきか、仮説検証型すべきかという問題設定自体がナンセンスで、Y社はたまたま実態を把握できずにいたところに、営業情報から仮説を見出し、それを検証した、という整理が正しいということになる。

P夫 なんか、ますますわからなくなるかも・・・。

owl う~ん・・・^^;
こういう例えではどうだろう。みんな、健康診断はしているよね?

P夫 まあ・・・

owl 健康診断は、なんでするの?

Q子 体に、どこか悪いところがないか調べるためじゃないですか。自覚症状はなくても、どこか悪いところがないかを定期的に調べることで、病気の早期発見をするという。

owl で、何か悪いところが見つかったら?

Q子 精密検査ですよね、やったことないですけど・・・。

P夫 ぼく、ありますよ。胃に影があるとかで、胃カメラを飲まされました。二度とイヤですけど・・・

owl 結果はどうだったの?

P夫 潰瘍が見つかったとかで、薬で治療をしましたけど。

owl で?直ったの?

P夫 再検査では、なんともないと。
僕の病気が、何の関係があるんですか?-_-

owl ごめんごめん^^;でもね、ちょっと考えてみて。

まず、毎年健康診断をしているよね。これって、いってみれば実態把握型のリサーチをしていることになると思わない?
そして、何かおかしなところが見つかったら精密検査をしてみる。これは、仮説探索型のリサーチ。具体的に、どのような病気かを健康診断とは別の手法で探し当てているんだよね。
で、治療をしてみる。これも、いってみれば仮説にあたるよね。この病気・症状なら、この治療法と薬って。そして、実際に直ったかどうかを再検査してみる。いってみれば、仮説検証型のリサーチ。
こうやって当てはめてみると、それぞれのリサーチの役割や位置づけってわかりやすくならない?

Q子 ほんとだ・・・。いってみれば、リサーチって企業の健康診断であり、精密検査であり、再検査であり、ってことなんですね。

owl そう思うよ。だから、実態把握型のリサーチが重要なんだよね、病気になる前にその兆候を発見しようというんだからね。それに、体も市場も、それぞれの個体で違うのだからふだんどのような状態にあるのかを知らないと、変化もわからないからね。

今度は、素直に実際の商品開発の事例で整理してみようか。
教材は、『新製品・新事業開発の創造的マーケティング』で取り上げられていた「からだ巡茶」にしてみよう。

1.現状把握と仮説整理
・世の中で起こっている事象を把握するためのデータ整理
→既存市場データ、時系列市場トレンド、消費者意識データ、飲料購入調査から
・有識者ヒアリングの実施
→コンビ担当営業部隊へのヒアリング、スーパー担当へのヒアリング

2.初期仮説設定と開発キーワードの整理

3.仮説の深化
・専門家ヒアリング
・店頭観察
・一般消費者の「漢方意識」調査(web調査)

4.仮説の検証
・マーケットサイズとターゲットの特定のための一般消費者調査(web調査)
→因子分析、重回帰分析、クラスター分析の実施
・グループインタビュー
→ターゲットのプロファイリング

5.総合コンセプトの作成と承認

6.処方開発、ネーミング開発、パッケージ開発
→パッケージスクリーニングテスト

7.最終バンドル調査
→上市に近い状態でプロトタイプをつくり、総合的に製品としてどの程度の消費者受容性があるかのシミュレーション調査

どう?きちんと、実態把握→仮説探索→仮説検証の流れを踏んでいることがわかるでしょう?
とくに、最初のデータ整理で使われているのは、このときにあらためて調査をしているのではなくて、継続して実施している調査データがあってはじめて可能な分析だということに注意してほしいな。

P夫 なるほどね・・・。こうやって、具体的な事例をみるとよくわかりますよね。
でも、逆に、自分たちがいかにきちんとやっていないかということも気づかされますけど・・・。

owl 本を読んでもらうと、それぞれのステップでどんなことを考えたかも具体的にわかるから、興味をもったらぜひ読んでみてね。その方が、より理解は深まると思うから。

さて、これで調査目的とタイプの話は終わり。
つぎからは、他にもいっぱいあるリサーチを行う上で知っておいて欲しいことを話していくね。仮説、代表性、時系列データと横断分析、バイアスと偏り、%や平均の意味などをテーマにしていくつもり。
それと、そろそろマーケティングについての本も読んでおいてもらった方がいいだろうね。仮説探索の話なんかも、プロダクトコーン理論を理解している方が理解は早かったりするだろうし。
いくつか紹介していくので、目を通しておくこと。

Q子 はーい^^

仮説検証型リサーチ(調査)

owl 長らくご無沙汰しておりました・・・、皆さんも健康にはお気をつけください・・・。

Q子 もう-_-

owl 今日は、調査タイプの最後、仮説検証型のリサーチについて。
紹介したい本が溜まってきているから、さくさくいこうね^^;

さて、実態把握も終わり、仮説探索も終わり、ある仮説ができあがりました。
そこで必要になってくるのが、果たしてこの仮説は正しいのか、このまま開発を進めて大丈夫なのかというステップだよね。

P夫 でも、仮説はあくまで仮説であって、いちいち確認が必要ですかね・・・。
それと、そもそも「仮説」ってなんですか?これも、わかったようでわからない言葉なんですが・・・。

owl そうだね、「仮説」って言葉は結構使うけど、ほんとうのところってよくわからないよね。ただ、これを説明しはじめると長くなるので、機会を改めて説明することにする。
今回は、たとえば商品開発に際して、ターゲットはどうするのかとか、コンセプトはどうするのかとか、もっと進んで商品自体の仕様は、パッケージは、価格は、流通先は、広告は・・・といったように、いろいろなことを決めないといけないでしょ?その、いろいろなこと、方向性といえばいいかな、とりあえずはこれらのことと思っておいてもらえればいいや。

Q子 それをいちいち確認しなければいけないんですか?

owl 「しなければならない」ということはないかもしれない。ただ、市場に商品を出した時のリスクを少しでも小さくしようと思ったら、した方がいいだろうね。
仮説はあくまで仮説であって、それがほんとうにお客様に受け入れられるかどうかは別の話だから。

P夫 みんなそんなことやっているんですか?だいたい、さっきのターゲット、コンセプト、商品仕様、パッケージ・・・みたいに、その都度で調査をしていたら、開発に時間はかかるし、お金はかかるし。。。

owl うん、P夫君のいうことも、もっともだと思う。
でも、じゃあ仮説のままでつぱっしって、いざ市場に出したらまったく売れなかったというのも問題なんじゃない?

P夫 それはそう。でも、いまの時代って、とにかく他社に先駆けて新しい商品を出せるかというのも、必要ではないですかね?失敗したと思ったら、すぐに改良すればいいと思うし。ソフトなんか、発売された後で、つぎつぎとバージョンアップのソフトをダウンロードさせたりするじゃないですか?

owl たしかに、いまはとにかく発売してしまうことが、最大のテストマーケティングという考え方も、あながち否定できないとも思うよ。
費用対効果の問題だよね。開発コストがそんなにかからないとか、ソフトのようにすぐにバージョンアップをすることができるような商品、あるいは他社がすでに成功しているミートゥー商品だったら、あえて費用をかけて調査をするよりも発売した方がいいという考え方も成立すると思う。
でも、開発にそれなりのコストがかかる商品だとか、ここ一番の商品だとかだったら、やはりきちんと検証を繰り返しながら、商品をブラッシュアップして、発売する方が結局は費用対効果が高いということも少なくないんじゃないかな?

P夫 そうですね・・・。

owl それに、いまはweb調査もある。早く、安く、ターゲットを絞り込んだ調査をすることができる環境になっているんだし。これが、web調査の最大のメリットだし、リサーチにおける貢献だと思うんだけど。

Q子 で?仮説検証のリサーチってどうやるんですか?

owl 難しく考えずに、できたコンセプトや商品仕様、パッケージなんかを直接、お客様に想定している人達に聞けばいいんだよ。

P夫 へ?そんなんでいいんですか?注意することとかは?

owl いい質問^^
いま、P夫くんは、どんな質問を想定したんだろう?

P夫 「あなたは、このコンセプトについてどう思いますか」とか?

owl で、「いいと思う」「まあいいと思う」てな感じで選択肢をつくると。

P夫 まあ・・・。

owl それで?

P夫 で、「そう思う」「まあそう思う」という人が多ければOKと・・・。

owl まあ、ふつうはそう考えるよね。
でも、いつかも話したと思うけど、よほどひどいものでなければ「まあそう思う」くらいは、回答するんじゃない?それで、ほんとうにいいんだろうか?

P夫 でも、アンケートってそんなもんでしょ?

owl では、少し質問を変えて。この調査をする目的って何?

P夫 仮説が正しいかどうかを検証すること。

owl 確かにそう。でも、正しいかどうかがわかるだけでほんとうにいいのかな?
では、ここでいくつか仮説検証型リサーチの整理をしてみるね。

まず、目的はなんだろうか?
一番知りたいのは、P夫くんもいうように仮説は正しいのか、言葉を変えると消費者のニーズにあうのかということ。これは、避けて通れない関門だよね。では、ニーズに合うというのをどうやって判断するのか。単純に「どう思いますか」の答えだけではなんともいえないでしょう?もっと、いろいろな視点で検証しないと。たとえば、回答者は提示したコンセプトを理解してくれたのか、共感してくれたのか、関心をもってくれたのか、これまでの商品と比べて差別性があると感じてくれたのか、新しいと感じてくれたのかなど多角的に捉えておくことが必要じゃないかな。それと、具体的に買ってみたいと思ったのか、これまで購入してきた商品からスイッチしたいとまで思ってくれたのか、くらいまで押さえることも必要かもしれないよね。コンセプト段階では難しいかもしれないけど。

で、ニーズに合う、あるいは合わないとわかったとして、それでいいのか?そんなことはないよね?具体的に、つぎのステップに進むにあたって、どこを強化すべきか、補強すべきか、直すべきかがわからないと、どうしようもないでしょう?これが、2番目の目的。

そして、仮説っていくつかある場合がほとんどなんだけど、じゃあどれがいいのかを最終的に決断しないといけない。複数案の中から、最善案を決定しないといけないよね?これが3番目の目的かな。これは、1番目と2番目の目的から判断することだと思うけど。

P夫 ふむ・・・。なんとなく、納得です・・・。

owl これで、目的は整理できた。調査票もつくれる。では、つぎに設計はどうするか?
どう?

P夫 どうって。。。ふつうに、誰に、どのように聞くかを決めればいいのでは?

owl そうなんだけどね^^;
これまでの、実態把握型や仮説探索型のリサーチと、この仮説検証型のリサーチのもっとも違う点は、調査設計かもしれないと思うんだ。
前の2つは、極論すると数字としての厳密性はそんなに高くないといえるかもしれない。でも、「検証」という言葉でもわかるように、このタイプのリサーチは、設計の厳密性が結構重要になる。さっき言ったように、最終的には複数案の中から最善案を決めなければならないわけだからね。
「ほんとうに、B案に比べて、A案の支持が高いといえるのか」ということが言えないと意味がない、ということだよね?
ここで、「実験計画法」の知識が必要になってくる。

Q子 実験、ですか?「あるある」みたいな?まゆつば・・・-_-

owl まあ、あれも本当はそうなんだよね。それが、正しい実験を行ってないばかりか、結果を捏造しているかもしれないから、問題になっているんだけどね。
この、「実験計画」は、結構難しいからね。ここでは、説明しないけど。。。

では、設計にあたって何を決めないといけないか。
まず、手法をどうするか?
WEBでやるのか、対象者を会場に呼んで行う会場テストか、回答者の自宅に商品を送って実際に使ってもらうHUT(ホーム・ユース・テスト)か、あるいはデータより改善ポイントの抽出を主眼にグルインでやるか。テストをするもの(コンセプトか、プロダクトか、パッケージか・・・)によって、また開発段階や、商品カテゴリーによって決まってくる。

つぎに、調査対象者をどうするか?
今のユーザーのみか、これまでユーザーでなかった人も含めるのか。あるいは、ヘビーユーザーのみでいくか、ライトユーザーまで含めるか。さらに、自社ブランドユーザーのみでいくか、競合ユーザーも含めるのか。これは、開発しようとしている商品の位置づけで決まるよね。

で、最後に、どんなテストをするのか。
これは、複数案を、どのように対象者にふりわけるか、提示するのかということだけど、これが実験計画を理解していないと、どうにもならない。何も知らないと、かなり適当な調査計画になってしまうから、注意が必要なんだ。
ピュア・モナディックか、シーケンシャル・モナディックか、一対比較でいくか。
ブランド名は提示するか、提示しないのか。
テスト品の提示順はどうするのか。系列位置効果とか、隣接効果の問題があるので。
これらで、調査結果はかなり変わってしまうから。

P夫 う~ん・・・。なんか、また魔法の言葉が・・・。モナ・・・なんですか?

owl 聞いたこと無いの?でも、これまで商品開発の調査ってやっているんだよね?

P夫 一応・・・。

owl だとすると、やばいかも・・・。
こんなことあまり言いたくないけど、へたをすると調査会社の人間でも、このあたりのことについて、正しく理解していない人間もいるかもしれないからな・・・。
これも説明を始めると長くなるから、今回は説明しないけど、一度自分で言葉を調べておいた方がいいかもしれないね。後で、きちんと説明するけど。
とりあえずは、この本(『マーケティング・リサーチの論理と技法』)あたりで勉強しておいた方がいいかもね。

Q子 少しでいいので、さわりだけでも。。。たとえば、どんなことですか?

owl そうだね・・・。
たとえば、君たちの名前、P夫くんとQ子さん。これも、なんの意味もなくつけたわけじゃないんだよね。

Q子 へ?

owl たとえば、提示したい案が3つあるとする。調査の現場では、呈示試料というんだけど、この3つの試料に名前をつけるときに、たいてい、P、Q、Rという記号を振り分けるんだ。なぜだと思う?

Q子 さあ・・・。

owl 最近、「県庁の星(→ CD)」って映画みたんだけど、この中でも象徴的な場面があったね。

Q子 織田裕二と柴崎こうのですか?けっこう、おもしろかったですよね^^

owl ある意味、マーケティングの勉強にもなるしね。「データでは、見えてこないことがいっぱいある」的なセリフがあったけど至言だよね。
で、この中で、お弁当つくりの競争の場面があるんだけど、AチームとBチームに分ける時に、県庁から研修に来ている織田裕二は最初Bチームといわれてむっとするんだ。
なんでだと思う?

P夫 そりゃ、AチームとBチームだったら、Aチームの方が正統派というか、いいチームという印象があるからじゃないですか?

owl そうだよね?どうしても、A、B、Cという記号には、すでに序列関係のイメージがついてしまっている。だから、CよりB、BよりAがいいと直感的に思ってしまうんだよ。
だから、調査のときの呈示試料についても、そのようなイメージを与える危険性を排除するために、P、Q、Rという記号をつけているんだ。
君たちの名前を、P夫くんとQ子さんにしたのも、調査屋のくせ^^;

Q子 なるほどねー。そんなところにまで、気をつかうんですね。

owl そう、この例は一部でしかないんだけど、とにかく調査の回答者に少しでも予断を与えたり、心理学的な見地からのバイアスがかからないように、いろいろと工夫をしているんだよ、調査の現場では。
そんなことを知らない人はいっぱいいるし、なんでこんなに準備に時間がかかるんだみたいなことを言う人もいっぱいいるけどさ(ブツブツ・・・)

Q子 はいはい^^;

仮説探索型リサーチ(調査)

owl さて、今日は「仮説探索型」のリサーチについて。
P夫くん、仮説探索型のリサーチって、どんな調査だったかな?

P夫 えーと・・・。あるテーマに対しての仮説を開発したり、消費者の本質・インサイトを発見したりという目的のリサーチ。実態の把握ではあるけど、実態把握型よりはテーマを絞り込んだ深いリサーチ。

owl まんまコピーだね^^;、意味わかってる?

P夫 なんとなく・・・

owl どこがわからない?

P夫 「実態把握ではあるけれど」というとこ。前の実態把握型リサーチと、どう違うのかと・・・。

owl そうだね・・・。
実態把握型リサーチって、とにかく今の現状を把握するということが目的だから、わりと広いテーマで、浅く聞かざるを得ないことが多いんだ。認知率も知りたい、認知経路も知りたい、利用状況も知りたいし、どこで買っているのか、どれくらいの頻度や量で買っているのか、なんで使っているのか、なんで使っていないのかも知りたい。そもそも調べたい商品やサービスに対して、どんな期待や不満を持っているのかも知らないといけないし、ブランドイメージも必要だな・・・。
てな具合に知りたいことが、いっぱいあるよね。そうなると、質問の量もすごいことになって、詳細までは突っ込んで聞けないよね。
そもそも、実態把握型リサーチの目的は、市場の実態を把握して、変化の兆しをつかまえることが主眼だから、そんなに突っ込んだ質問もいらないともいえるけど。

P夫 それは、わかります。確かに、商品開発のときの最初の調査って、あれもこれも入れて、調査会社の人に、「質問量が多すぎて、回答者の負担が大きすぎます。回答が適当になる危険性がありますよ」って言われることがあるから。
でも、それがわかっても、じゃあ「仮説探索型リサーチ」がどんなことをするかが、いまひとつぴんとこないんです。。。

owl うん、それじゃ前回も使った自動車を例に考えてみようか。
実態把握のために自動車の販売台数をみると、去年は登録車の販売台数がずっと前年割れしていて、軽自動車の販売台数が伸びているということがわかった。では、なんで軽自動車ばかりがこんなに売れているのか?
Q子さん、どう思う?

Q子 えーと。軽自動車の方が、小さくて、かわいいし、いろんな色があるし。i(アイ)とか、これまでになかったようなデザインの新車も出てるみたいだし。
それと、日本の道路は狭いし、渋滞しているから軽自動車の方が走りやすい、とか?

owl そういう面もあるだろうね。P夫くんは?

P夫 単純に、維持費が安いからじゃないですか?税金とか安いみたいだし。燃費もいいって聞くし。

owl おそらく、「あなたが軽自動車を購入した理由はなんですか」って質問項目でアンケート調査をすると、いまQ子さんやP夫くんがいったような回答が多いんだろうね。
これが実態調査の結果だとすると、では、もっと買ってもらえる登録車を作ろうとしたら、どんな車を作ればいい?

Q子 税金が安くて、燃費がよくて、かわいいくて、狭いところでも楽な車。

owl そういうのを、もぐらたたき的解決っていうんだけど、それでは商品の開発は無理^^;
そもそも税金なんて、国が決めていることだから、メーカーにはどうにもできない。

P夫 じゃあ、どうするんですか?だって、アンケートでそういう答えが出てきてるんですよね?

owl そこで、仮説探索型リサーチが必要になってくるんだ。消費者の意識に上っていること、聞かれたら答えるられることは、さっき君たちが言ったことで正しいと思う。けれど、実際に車を買う時や使う時のことを考えてごらん。きっと、もっといろんなことを考えていると思うよ。
その、「ほんとうのところ」を探るのが、仮説探索型のリサーチになるんだ。

Q子 でも、「ほんとうのところ」って、どうやって調べるんですか?ふだんは、あまり考えていないことを聞くんですよね?難しそうですけど。。。催眠術にかけるとか?^^;

owl 催眠術は、とっぴ過ぎるけど・・・。
確かに、仮説探索型リサーチは難しいと思う。ただ、今、もっとも必要とされているのも、実は仮説探索型リサーチだったりもする。「調査は使えない」というのも、この裏返しだと思うよ。
前に、このblogでも紹介したコカ・コーラの人が言っていた言葉があるよね。

『生活者自身も理解・説明困難な領域に果敢に踏み込み、リサーチャー自らがコンテクスト化し、逆に生活者に気づきとして還元することが、製品開発やマーケティング戦略への近道になるからである(「新事業・新製品開発の創造的マーケティング」)』。

「インサイト」という言葉も、このblogで何度か使っているけど、これもそうだね。ほかに、「ニューロ・マーケティング」とか、「心脳マーケティング」とか、「ポストモダン・マーケティング」とか、いろいろな言葉が話題になったりしているけど、全部、「消費者のほんとうのところ」をどうやって捉えるかということを、テーマにしていると思うんだ。

P夫 そんな関連の本を、ちらちら見てますけど、結局のところ、どうしたらいいかはあまり書いていないような気が・・・。

owl そうかもしれない。たとえば、質問紙調査のように、定まった手法ではないからだろうね。
あ、具体的な方法論を期待されても困るからね。いま言ったように、いろいろな手法が提案されているし、試されているから、ここでひとつひとつについて具体的な解説はできないので・・・。

Q子 で?、どんな方法があるんですか?

owl いくつかの手法をあげてみるよ。

  • 自由回答中心のアンケート調査や日記形式のアンケート調査
  • ベネフィット・ストラクチャー・アナリシス、コンジョイント分析、因子-クラスター分析、コレスポンデンス分析やMDSなどを使ったマッピングなど、定量データを元にした分析手法
  • 投影法を応用した定性調査
  • エスノグラフィ、観察法などによる行動分析
  • 評価グリッド法、レパートリーグリッド法
  • ラダリング法
  • ZMET法

う~ん・・・、うまく整理できていない感じもするな-_-。
こういう手法もあるんだ、くらいの理解にしておいてね^^;

P夫 最初の2つくらいはなんとなくわかりますけど、あとは聞いたこともないです。。。

owl うん、たぶん調査会社に、こんな手法の調査があると聞いたんですけどできますか?と聞いて、即答できるところは、そう多くないんじゃないかな。
それだけ、仮説探索型リサーチは専門性が高いし、最近の手法だともいえるんだけど。

P夫 えー。じゃあ、こんなことをやりたいときはどうすれば?

owl P夫くんもいったように、最初の2つはそんなに新しいものではないので、まずはこのあたりからはじめるんだね。それと、投影法とか難しいことをいわずに、ふつうにインタビューとか。何を明らかにしたいかというテーマを明確にもって、設計をきちんとすれば、これらの方法でも、それなりの結果は得られると思うよ。あ、インタビューは、モデレーターも重要だけど。
他の手法を試してみたいのなら、これらをキーワードに検索をしてみれば、いろいろと研究している調査会社が見つかるんじゃないかな。ただ、さっきも言ったように、まだ実績が十分にある手法でもないと思うので、どれだけ有効な結果が得られるかはわからない、ということは覚えておいて。

Q子 でも、頼むなら、自分もそれなりに理解していないとまずくないですか?調査会社さんが提案してきたことが、正しいのかどうか判断できないですよ?

owl そう、いいとこに気づいたね^^。そういう姿勢は、忘れずにいてね。
そうだね・・・。では、いくつか参考になる本をあげておくよ、全部の手法を網羅できているわけではないと思うけど。それに、ここにあげる本を読んだからといって、すべてが理解できるということもないから。概要がなんとなくわかる、程度だと思って。

ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2002-07

これは、具体的な手法の解説をした本ではないけど、「ほんとのところ」について探索した事例が載っているので参考になると思う。とくに、ラダリングを理解するのにはいいかも。

図解やさしくわかるインサイトマーケティング 図解やさしくわかるインサイトマーケティング
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2006-09-22

「インサイト」探索を実際に行う手法を具体的に解説してくれいてる。でも、それより「インサイト」とは何かという本質の方を理解してほしいけどね。

魅力工学の実践―ヒット商品を生み出すアプローチ 魅力工学の実践―ヒット商品を生み出すアプローチ
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2001-08

いろいろな企業の人が、自社の商品の開発事例を紹介している。メールでのラダリング法とか、FAによる質問法とかの事例もある。

マーケティングリサーチの論理と技法 マーケティングリサーチの論理と技法
価格:¥ 3,465(税込)
発売日:2004-09

これは、以前にも紹介している本だけど、コンジョイント分析とか、ラダリング法についても書いているから。

心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press 心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-02-10

これは、「心理学×脳科学からのアプローチ」とうたっているZMET法についての本。ZMET法については、ライセンスがあるみたいで、どこでもやっていいということではないらしい。日本でもライセンスを取得している会社はあると思うけど。

アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実 アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2000-06

これも前に紹介しているけど。3章がとくにお勧めで、何も考えない調査がどんなに害悪かがわかると思う。インサイトに近づくための考え方や調査については、4章を。

マーケティングで使う多変量解析がわかる本 マーケティングで使う多変量解析がわかる本
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2007-01-26

ごく最近の本。主な多変量解析についての概要を理解するには、手ごろ。マーケティングの事例を使って解説しているから、理解しやすいと思う。

こんなところかな。

ただ、覚えておいて欲しいのは、どんなに手法を理解したとしても、それで「ほんとのところ」に迫れるかというと、そんなことはないということ。何度もいうけど、結局は、何を明らかにしたいのかという課題の設定がすべてだということは、肝に銘じておいてほしい。
すばらしい包丁を使えば、誰でもおいしい料理がつくれるというわけではないでしょ?それと一緒だから。

P夫 すいません、また頭が痛くなってきました・・・。

Q子 どれから読もうかな♪

P夫 まじ?・・・

owl では、今日のまとめをしようか。Q子さんの方がいいかな。P夫くんは、沸騰気味だから^^;

Q子 新しい商品やサービスを開発するには、実態把握型のデータだけでは不十分で、消費者の「ほんとのところ」を捉える必要がある。むしろ、いまは、この「ほんとのところ」をいかに見つけ出すかが重要で、手法もいろいろ開発されている。

owl そんなところかな^^

実態把握型リサーチ(調査)

Q子 また、ずいぶん間が空きましたね・・・-_-

owl ごめんなさい、ちょっと風邪気味で^^;。花粉症の疑いもあるけど・・・。のどいたいし、鼻水とまらないし、くしゃみだし・・・。

Q子 はいはい^^;。で、今日のテーマは?

owl 前回、話をした3つの調査タイプのうち、最初の「実態把握型」のリサーチ(調査)について、少し詳しくみていこうと思う。
P夫君、「実態把握型」リサーチって、どんなリサーチだったか覚えている?

P夫 えーと・・・。いまの市場がどうなっているのか、消費者がどうなっているのか、自社のブランドや商品はどうなっているのか、競合との比較ではどうなのか、といったように、とにかく実態を把握しようというタイプのリサーチ。

owl そうだったね。では、具体的にどんなリサーチ・テーマが思い浮かぶかな?

P夫 消費者がどうなっているか、自社の商品がどうなっているか・・・

owl さっきと同じじゃん!^^;
とはいっても、具体的なリサーチ・テーマをあげるとなると、かなり広い範囲に渡るのも確か。大雑把にまとめてしまうと、つぎようなものがあるんじゃないかな。

  • 生活実態調査
  • 利用実態調査(U&A=Usage&Attitude調査)
  • 企業・ブランドイメージ調査
  • 広告調査
  • 価格調査
  • 流通実態調査
  • 売上分析、マーケット・シェア分析

Q子 う~ん・・・。なんとなくわかるような、でもわからないような・・・。

owl そうだね。確かに、こうやってみると一般的にすぎるし、こんなテーマ・アップだけでは、実際の調査はできない。「生活実態」といっても、どのような生活に焦点を合わせるかで、内容は全然異なってくるから。
ただ、フレーム的に、これだけのことを知ることが、企業活動には必要だということは覚えておいてほしいんだ。
まず商品やサービスを購入している生活者がどのような生活をしているのか、その中で自社の商品・サービスはどれくらい知られていて、どのように購入され、使用されているのか。競合と比較して、どうなのか。また、お客様の選択の手掛かりともなるブランドや企業のイメージは、どうなっているのか。
そして、広告や販促はどの程度、生活者に伝わっているのか、正しく理解されているのか、店頭での価格はどうなっているのか、流通の現場で棚に並んでいるのか。
結果として、どの程度の売上をつくり、どの程度のシェアを獲得できているのか。
こんな感じで言葉を変えてみると、理解しやすいでしょ?

P夫 確かに理解はできますけど、こんなにマーケティングの全体にわたってリサーチをしている会社ってあるんですか?少なくともうちの会社は、新しい商品を開発する時に、調査をしてみようかって感じですけど・・・。

owl そうだね。これだけ、きちんと系統だててリサーチを実施している会社は、多くないかもしれない。でも、必要だと思うでしょ?

P夫 まあ、必要だとは思いますけど・・・。

Q子 なんで、これだけきちんとやっている会社が少ないんですか?

owl それは、膨大な費用と労力がかかるからだろうね。それと、実態把握型リサーチの結果って、一見、あたりまえの結果が得られることが多いから、費用対効果の面でどうなんだという話になりやすいというのもある。
個人的な経験からすると、だいたい3回くらいは実施するけど、そこで「もういいや、毎回同じ結果だから」ということになりがちだね・・・。

P夫 だったら、やっぱり必要ないんじゃないですか?

owl それは、データをどう使うか、という意識の問題だと思うけどね。
回をあらためて話をしようと思うけど、同じフレームで継続していないと、実態把握型リサーチの価値は、だいぶ損なわれるといっても過言ではないと思う。
一回だけのデータで、変化を捉えることができるかな?3回だったら可能かな?
あるいは、たとえば認知率調査で15%という数字が出て、これは成功なのか、まだまだなのか、断言できるかな?

P夫 たしかに、調査のデータをみて、高いという人もいれば、低いという人もいたり、人によって解釈が食い違うこともありますけど・・・。

owl そうでしょ?だから、実態把握型のリサーチでは、できるだけフレームや設問を変えずに、継続して実施することに価値があるんだよ。
リサーチをきっちり行っている会社では、リサーチ体系の中で、このような実態把握型のデータを積み重ねて、変化の兆しを捉えようとしているし、リサーチの結果も科学的に解釈しているよね。

P夫 わかりますけど・・・。その都度、単発でやっていては、まったく意味ないですか?

owl そんなことはない。たとえば、商品開発にあたって実態を深く知りたいというときや、商品の発売後に開発テーマに沿って利用実態を知りたいというような時は、継続調査だけではデータが足りないときもあるだろうし。
(ただしこれらは、実態把握型というより、次回以降の仮説探索型や仮説検証型と捉える方が、すっきりします。)
いくら、データの積み重ねが大事とはいっても、単発でもやらないよりは、やった方がいいだろうしね。市場について理解した上で、開発をはじめるのと、そうでないのではリスクは全然違うから。

Q子 実態把握型のリサーチって、やっぱりアンケートですか?

owl アンケートというか、定量型の調査がメインにはなると思う。「実態を把握する」ことが目的なんだから、数量的に捉えられていないと意味がないからね。
ただ、オープンデータの分析も、有用だね。社内には、売上データとかPOSデータとかあるんだから、そのデータを分析するだけでも、変化の兆しをつかめるよね。あるいは、業界団体が発表しているデータもあるよね。
たとえば、自動車販売台数の推移とかみると、登録車の購入が減少していて、軽自動車の販売台数が増加しているよね。このような実態を認識しているかどうかで、つぎの商品開発の考え方は異なってくると思わない?

P夫 確かにそうですね。。。ただ、それがわかっただけでは、何にもならないとも思うけど。

owl それはそう。だから、この実態=軽自動車の販売比率が上昇している、の背後にあるのは、どのようなニーズかということを深堀する必要が出てくる。それが、仮説探索型の調査だよ。

P夫 そういうことか・・・。

owl けれど、この実態を認識していないと、そんなリサーチテーマさえ思い浮かばないわけだから。だから、実態把握型のリサーチは必要だということなんだ。

Q子 他には、オープンデータというと、どんなものがあるんですか?

owl 一般的なものは、官公庁が発表している様々なデータがあるでしょ?それと、さっきの自動車の例に出したような業界団体でまとめたデータ。
他には、調査会社やシンクタンクが販売している継続データもあるよ。「シンジケート・データサービス」といって、購入しないといけないけど。それも、結構なお値段・・・。
たとえば、つぎのようなデータがあるね。

他にもあると思うけど、とりあえず、思いついたものだけ^^;
調査会社やシンクタンクのHPに行けば探せると思うから、他にもあたってみて。
そうそう、シンジケート・サービスとは異なるけど、様々な調査データを検索してくれる、つぎのようなサービスもあるよ。

Q子 へー、オープンデータって、いろいろあるんですね。。。自分のとこで、あらためて調査する必要ないみたい・・・。

owl いっぱい、あるよ。オープンデータについての講義もいつかしないとね。オープンデータについての知識の有無も、できるリサーチャーかどうかの差になってくるからね。
ただ、これらのデータは、調査項目やフレームが決まっているし、データの提供方法も決まっている。だから、帯に短し、襷に長しということもある。
けれど、さっきから言っているように、一から、毎年、これらのデータを独自で集めようとするとそれもたいへん。。。
自社で必要なデータがどんなデータで、そのデータを入手するには、公開データでいいのか、専門機関のデータがいいのか、自社で独自にリサーチすべきなのか、費用対効果も考えて、きちんと計画しないとね。

P夫 一言で、実態把握型のリサーチといっても、いろいろあるんですね・・・。

owl それがわかっただけでも、意味があるよ^^

【お知らせ】
前回の投稿で、世界のリサーチ会社のランキングを掲載しましたが、またちょっとした動きがあったようです。詳細は、前回の投稿に記載しますので、そちらを参照ください。