日別アーカイブ: 2006-12-23

『マーケティング・リサーチ・ハンドブック』

マーケティングリサーチハンドブック―リサーチ理論・実務手順から需要予測・統計解析まで マーケティングリサーチハンドブック―リサーチ理論・実務手順から需要予測・統計解析まで
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2004-12

「小難しい理論とか考え方はおいておいて、もっと実務で使える本はないの?」という方、本書をどうぞ。

「ハンドブック」というわりには、総ページ数437ページにも及びます。マーケティング・リサーチと統計解析もあわせて、網羅的に実務書を書くとこれだけの分量になります。
それでも、本書は左ページに文章、右ページに図表という形で、できるだけわかりやすく、マーケティング・リサーチの実務について整理している唯一の本だと思います。
とくに、実査とよばれるデータ収集の段階について、これだけていねいに書かれたものはないのではないでしょうか?

もくじを紹介します。

第1章 マーケティング・リサーチとは
第2章 マーケティング・リサーチの種類
第3章 2次データ収集分析調査
第4章 定性的調査
第5章 観察調査
第6章 実験やテスト
第7章 アンケート調査の種類
第8章 アンケート調査の企画
第9章 アンケート票の作成
第10章 アンケート調査の実査
第11章 調査データの集計
第12章 報告書の作成
第13章 個人情報の保護
第14章 統計解析の基本
第15章 需要予測
第16章 多変量解析

著者は、調査会社の現場で長らくリサーチを行ってきた方ですので、本書のような実務書が書けたのだと思います。
本文ももちろんポイントをついて整理されていますが、なかなか味があるのが、各章の最後に書かれている「Coffee break」です。実務を行う上で、見失いがちになったり、忘れかけてしまうような点を指摘してくれています。
たとえば、

・スローリサーチとファーストリサーチ
・2次データの鑑定眼を磨こう
・実験やテストは繰り返しで信頼性が高まる
・アンケート調査の「その他」
・数を追う猟師、山を見ず

といった内容です。
このコラムだけでも、一見の価値があるかもしれません。

マーケティング・リサーチの実務に携わっている人は、新たな手法に取り組まなければならないときや、わからない言葉に出会った時などの検索用に、デスクに常備しておくのによい本だと思います。

『社会調査ハンドブック』

社会調査ハンドブック
価格:¥ 1,937(税込)
発売日:1987-09

題名は「社会調査」となっていますが、かなりマーケティング・リサーチ寄りに書かれている本です。また、「ハンドブック」とありますが、決してノウハウ一辺倒ではなく、かなり本質論に触れている本です。

「マーケティング・リサーチはやっているけど、ほんとうに役立っているんだろうか?」「マーケティング・リサーチって、こんなものなんだろうか?」という壁にぶつかっている方には、とくに読んでおいていただきたい本です。
(とはいえ、マーケティング・リサーチについてあまり知らない方が読んでも、十分に使える内容になっています。)

調査には「仮説」が必要だということがよくいわれます。では、「仮説」ってなんでしょうか?なぜ「仮説」が必要なのでしょうか?「仮説」はどう導けばいいのでしょうか?
それに対する答えが、本書で得られるのではないでしょうか。
著者の飽戸先生も、はしがきで本書を執筆するに至った理由を、つぎのように述べています。

「市場調査」「世論調査」をはじめとする種々な「社会調査」に関する書物は、すでに数十冊近く刊行されている。にもかかわらず、あえて本書を執筆した理由は2つある。まず第一に、これらの社会調査に関する多くの書物が、あまりに技術的説明に終始した無味乾燥なものが多いこと、もっと調査というものについての哲学をもち、かつ調査に対する愛情が芽生えるような本がぜひ必要だと考えていたこと。そしてもう1つは、筆者が主張し続けてきた仮説検証的調査というものを実際に設計できるような理論と参考資料集をまとめておきたかったことだ。

すべての調査が、仮説検証を目的としたものではないという指摘もあると思いますし、正しいと思います。
しかし一方で、思いつきの質問を対象者にたずね、「得られるものがない」などと言っている人も少なくないことも、また事実です。

本書を通じて、一度、「仮説」ということをしっかりと理解してほしいと思います。
もくじを紹介します。

1章 社会調査とは何か
2章 社会調査の技法
3章 科学としての調査
4章 テーマをいかに設定するか
5章 ウソとマコトを見わける法
6章 標本設計の理論と方法
7章 信頼できるデータをとる方法
8章 調査結果の正しい分析
9章 調査の積み上げと活用
10章 調査と理論の結びつき
11章 調査に理論を導入する
12章 調査を理論に仕上げる
13章 仮説検証法の功罪
14章 仮説のつくり方とその検証法
15章 調査票作成の方法と問題点
16章 市場調査、世論調査、ライフスタイル調査の設計
17章 調査機関の選び方
18~20章 調査項目の実例

最後に、本書の欠点をひとつ・・・。
それは、出版年が1987年と古いことです。インターネット調査については、まったく言及されていません。現在の調査環境の激変についても、ふれらていません。

それでも、「仮説」についての言及は、古くなることはありません。
調査、リサーチに真剣に取り組みたいという方には、ぜひ、読んでおいていただきたい本です。

『社会調査へのアプローチ』

社会調査へのアプローチ―論理と方法 社会調査へのアプローチ―論理と方法
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2005-02

この本は、大学のテキストをイメージして書かれている社会調査の本です。
マーケティング・リサーチといっても、その基盤は「社会調査」です。なので、マーケティング・リサーチをしっかり基礎から学ぼうと思うと、社会調査の論理や方法論は避けて通れないテーマです。

そして、この本の中でも最初に指摘されているとおり、

社会調査は特別の人の特殊な知識ではない。我々すべてが「する人」「読む人」そして「協力する人」として、日常的に社会調査に関わりを持っている。社会調査の基礎知識は、現代を生きるための必須アイテムである。

と思います。
新聞、テレビ、雑誌、そしてWEB、調査データを見ない日はないといってもいいほどです。
ですから、少しでも「なんのために調査をしているんだ?」「調査ってどんなふうにやっているんだ?」「このデータって、信じられるの?」などと思ったことがある人にも、読んでおいてもらえるといいかもしれません。
(いきなり専門書ではなく、まずは新書くらいから・・・、という方にはこちらの本がお勧めです。
⇒『社会調査のウソ~リサーチ・リテラシーのすすめ』 )

ただ、大学のテキストと聞くと、「わかりずらい、読みづらい」という印象をもつ人も少なくないと思いますが、この本は大丈夫だと思います。語り口が、とても柔らかいです。異色です。
一例として、本文の最初の出だしをみると、

「社会調査なんて俺には関係ないよ」と思っているそこの人、そんなことでは現代を生きる立派な市民になれないよ。手始めにちょっと新聞を見てみよう。・・・

という感じです。
内容も、『講義のテキストとして実際に使いやすい本』『学生が実証的な調査(卒論)研究を独学で進めていける本』をめざしたというように、いたるところで、語句の解説やコラムを積極的に入れることで、理解を助けています。

もくじを紹介しておきます。

第Ⅰ部 社会調査の論理
 第1章 社会調査へようこそ
 第2章 情報資源の発掘調査-社会調査のファーストステップ
 第3章 社会調査の基本ルールと基本の道具
第Ⅱ部 調査票調査の方法
 第4章 調査票を作ってみよう
 第5章 サンプリングの理論と実際
 第6章 調査票調査のプロセスとデータ化作業
 第7章 調査結果を分析しよう
第Ⅲ部 質的調査の方法
 第8章 質的調査の魅力
 第9章 質的調査の実践
第Ⅳ部 補修と実習

とくに、これまで社会調査について全く勉強せずに調査会社に入ってしまったという方は、まずここから学んでおくことをお勧めします。
何事も、基本を理解しておくのは大切なことですので。

『マーケティング・リサーチの実際』

マーケティング・リサーチの実際 マーケティング・リサーチの実際
価格:¥ 872(税込)
発売日:2004-04

過去にも、マーケティング・リサーチに関する本として、つぎの3冊を紹介していますが、さらにいくつかの本を紹介しておきます。

『マーケティング・リサーチの論理と技法』
『マーケティング・リサーチはこう使え!』
『マーケティング・リサーチの理論と実践~理論編』

最初は、これまでマーケティング・リサーチについて、ほとんど知らなかったという方への入門書から。

まずはもくじをご紹介しておきます。

Ⅰ.マーケティング・リサーチは課題解決の手段です
Ⅱ.知っておきたい調査手法の種類と特徴
Ⅲ.マーケティング・リサーチを進める手順
Ⅳ.リサーチ課題にどのようにアプローチするか
Ⅴ.リサーチをとりまく環境

とくにⅢ章では、リサーチプロセスに沿って解説していますし、「チェックポイント」として、リサーチを進める上での確認事項も整理されていますので、ポイントを押さえるには便利です。
またⅣ章では、4つのテーマをあげながら、具体的にリサーチの流れに沿って事例を示していますので、具体的なイメージもつかめると思います。

ただ、いかんせん新書ですので、内容の深いところまでは提示されていません。
「マーケティング・リサーチってどんなことするの?」という、初歩の初歩について概要を知りたい方向けの本であることは、お断りしておきます。
さらに詳しい内容について知りたいという方は、他の本で理解を深めてください。