日別アーカイブ: 2006-12-21

『顧客理解の技術』

顧客理解の技術 変化を先取りし、価値を創造する 顧客理解の技術 変化を先取りし、価値を創造する
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2005-09-08

心理学からは離れますが、「顧客理解」という視点から、もう一冊紹介します。

著者は、シンクタンクのコンサルタントです。『消費者行動論』がフレームの理解だとすると、この本は、そのフレームを理解した上で、どのように顧客理解を行うかの技術=テクニックについて述べたものになっています。
「はじめに」で、『この本は、私たちの顧客に関する、数多くのコンサルティングの「実践の場で創出し、培ったノウハウ」を汎用化して書き上げたものである』と記されていることからも、わかると思います。

もくじを紹介します。

序章 成熟社会の顧客変化をとらえる技術
第一部 身につける、活用する
 第1章 5つの<顧客理解の技術>
      1.顧客変化理解の技術
      2.背景理由理解の技術
      3.顧客価値理解の技術
      4.顧客行動理解の技術
      5.顧客情報活用の技術
第二部 知見を深める
 第2章 顧客価値の理解を深める
      1.価値ポジショニングを考える
      2.差別化価値を深める
 第3章 <顧客理解の技術>参考データ集
      1.人口変化の基本データ
      2.世帯変化の基本データ
      3.バリューセグメント分析参考データ<サマリーデータ編>
      4.バリューセグメント分析参考データ<詳細データ編>
      5.消費トレンド分析参考データ<サマリーデータ編>
      6.消費トレンド分析参考データ<詳細データ編>

マーケティング・リサーチというと、「アンケートとかインタビューを行うこと」というような認識も少なく無いですし、実際、調査会社で行っているのは一次情報の収集が主です(本書の1章3~4の部分)。
しかし、一次データの収集だけがマーケティング・リサーチではなく、二次データ(オープンデータ)をどのように使いこなし、分析するのか(1章1~2)、というのも大事なスキルになるのではないでしょうか?また、第3章で取り上げている基本的な構造変化や、消費トレンドデータをどの程度理解しているのかということも、重要な視点です。
(とはいえ、第3章で取り上げられているデータは、ごく一般的なデータですので、何か新しいデータはないかと探している人にとっては物足りないものだと思います。)

シンクタンクがどのようなフレームで顧客分析を行っているかを知っておきたい方、オープンデータからどのような読み取りを行うかを知りたい方、そして、消費者や世代についての基本的なことを知っておきたい方、お勧めです。

『消費者行動論』

消費者行動論 消費者行動論
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-05-19

こちらの本も、執筆は大学の先生ですが、専攻がマーケティングですので、よりマーケティングの視点から消費者行動を整理しています。
「まえがき」でも、『本書は社会心理学の理論をマーケティングに応用し、ビジネスマンの立場で書かれている。理論とは型(フレーム)である。』と書かれています。ただ、同時に『最初に断っておくが、型はテクニックでない。』とも言っていますが・・・。

もくじを、各章扉に書かれているフレーズと共に紹介します。

第1章 消費者行動論とは何か?
 ~あなたは顧客がどのような行動を取るか考えたことがありますか?
第2章 個人的影響要因
 ~あなたは顧客の属性、行動、ライフスタイルを研究したことがありますか?
第3章 個人的要因:パーソナリティとセルフイメージ
 ~あなたの典型的な顧客がどのようなパーソナリティを持っているか知って
   いますか?
第4章 消費者関与
 ~あなたは顧客の関与を深めるような努力をしていますか?
第5章 問題認識
 ~顧客はどのような問題を解決するために、あなたの会社の製品を購入する
   のだろうか?
第6章 動機付け
 ~消費者に自社製品を購入する動機づけをしたことがありますか?
第7章 情報収集
 ~あなたは顧客がどのように情報検索を行い、どのように商品について学んで
   いるか研究したことがありますか?
第8章 学習
 ~あなたは、顧客がどのように自社製品やブランドについて学習するか考えた
   ことがありますか?学習を助ける活動をしていますか?
第9章 消費者の知覚
 ~消費者はあなたの会社のブランドに、どのような印象を抱いているのか
   調べたことがありますか?
第10章 消費者の態度
 ~消費者はあなたの会社のブランドに、どのような態度をもっているか知って
   いますか?その態度の形成には何が影響を与えたのでしょう?
第11章 社会的要因-グループの影響
 ~あなたは顧客の購買活動に影響を与えるグループの存在を認識して
   いますか?このグループを有効利用していますか?
第12章 選択肢の分類
 ~あなたの顧客は合理的な商品選択をしていますか?
第13章 評価選択
 ~あなたの顧客は何を基準に購買の意思決定をしているか知っていますか?
第14章 購買と購買後評価
 ~あなたは、顧客とどのようにリレーションシップを結ぼうとしていますか?

いかがでしょう?
それぞれのフレーズは、リサーチ目的としてもよいようなものばかりではありませんか?
このようなリサーチ目的のときに、どのような消費者行動理論があるのか?このことを学べる一冊です。また、それぞれの理論を比較的コンパクトにまとめていますので、事典的な活用もできると思います。

ただ、最初に著者が断っているように、この本に書かれているのは「理論=型(フレーム)」であってテクニックではない、ということは忘れないでください。
とはいえ、フレームを知っているのと、知らないのとでは仕事をしていく上で、大きな差になるというのも、また真実だと思います。

『ロジャースの普及理論、関与の種類、マズローの欲求5段階説、コンフリクト、IMC、閾値、認知的不協和、均衡理論(バランスセオリー)、準拠集団、オピニオンリーダー、想起集合(イボークトセット)、多属性態度モデル、サンクコスト・・・』

これらは、この本に出てくるフレームの一部ですが、いくつご存知ですか?
すべて知っているという方は、この本は読む必要はないでしょう・・・。
知らない言葉が多いという方は、ぜひ、この本を読んでみてください。