日別アーカイブ: 2006年12月7日

リサーチャーをめざす人へ(2)

owl 前回は、Q子さんにつられて、だいぶ実利的な話になってしまったけど、今回は、調査会社がどんな仕事をしているのか、どういう資質や能力が求められているのかについて。

Q子 お願いしま~す(^^)

owl ・・・。
では、調査会社の仕事。調査会社の主な仕事は、一般的には、クライアントの課題解決のために、リサーチの企画・設計をして、実際にデータを収集・分析・報告すること。だから、必ず実査を伴うことになるし、この実査をいかに正確に、効率的に行うことができるかが大切になる。そして、忘れないでおいて欲しいのが、適切なリサーチデザインを企画・設計するには、実査の現場を知らないといけないということ。学術的な正確さとか、理想の調査は確かにあるんだけど、現場では様々なことが起こるからね。「データを集める」と一言で簡単に言うけど、いろいろな作業工程がある。どのような作業が行われていて、どんなことに留意しなければならないのかについて、理想と現実のギャップを認識して、それをリサーチの企画・設計にどれだけ反映できるかということが、とても大切なことになる。
だから、調査会社に入ったら、一度は実査セクションを経験することはとても大切なことだと思う。

Q子 でも、実査って、泥臭いって書いてあったような・・・。嫌だな・・・。

owl どんな仕事でも、泥臭い部分はあるし、そんな仕事をしてくれている人がいるから、企業が成り立つんだよ。どうも、表面的なかっこよさとか、きれいなところしか見ない人が少なく無いし、そういう泥臭いところを嫌がってすぐに会社を辞める人もいるけど、それは違うと思うよ。
メーカーだって、工場で商品を製造してくれている人がいるし、営業で商品を売ってくれる人がいてはじめて、商品がお客様に届けられるんだから。そういうことを知らずに、商品開発だ、マーケティングだといっても、現実を見ない机上の空論になってしまう。
調査も一緒だよ。正しいデータを集めて、はじめて分析ができるし、クライアントへの提案だってできるようになる。データ収集の現場で、何が行われていて、どんなポイントがあるのかを知らないと、浮ついた企画や提案しかできないからね。

Q子 はい・・・。

owl では、企画や設計、調査票の作成はどうするか。これも、一朝一夕でできるようになるわけではない。テーマも様々、商品も様々で、いくつかのフレームやパターンを覚えたからといって、なんでもできるようになるわけではないから。むしろ、覚えたフレームやパターンに囚われて、テーマや商品を無視して企画をしたり、調査票を作っても、使えない調査になる可能性の方が高いと思う。
だから、知識を得ることや、経験を積むことに対して、貪欲になってほしい。自分で実際に経験できることは多くないのだから、他の人の仕事を見たり聞いたりする、新聞、雑誌やテレビ、あるいはセミナーなどを通じて、いろいろな業界や商品について理解しようとする、どんなことが課題になっているのかを知ろうとする、そんな態度や姿勢が必要だよね。

P夫 で、分析は?

owl 分析も、まずは知識と経験が大切。それと、センスもけっこう大事。
センスというと先天的なもののように思うかもしれないけど、やっぱり知識と経験に裏打ちされたものでないと。野球のイチローしかり、サッカーの中田しかり、将棋の羽生しかり。みんな天才的だけど、それまでの練習や訓練、学習の積み重ねがあってこそ、だよね。
で、リサーチャーはどんな知識と経験を積まなければならないか?
プロです、スペシャリストです、というくらいになろうとしたら、かなり広い範囲でカバーすることが必要だと思う。調査理論、統計理論はあたりまえとして、さらにマーケティングや経営学、心理学は必須かな。プラス、論理力、表現力、コミュニケーション力もないと困る。いまでは、ネットワーク理論や脳科学、行動経済学なんて領域まで知っていると、なおいいだろうね。
それと、クライアントの業界、商品について知らないのも、お話にならない。。。

Q子 なんか、たいへんそう・・・。私、リサーチャーの資質、あるのかな・・・。

owl これまでの繰り返しになるかもしれないけど、いくつかの本で整理されている「リサーチャーの資質」を上げておくので、参考にして。
ただ、これをみてすぐに諦めないでね(^^;
皆がみんな、こんな人というわけではないし、仕事を通じて身に付くものだっていっぱいあるんだから。ただ、リサーチャーを目指したいという人は、ひとつの指針として、頭の中には入れておいてほしいんだ。
(のだめではないですが、「上」をめざすつもりのない人は別です・・・)

まずは、「マーケティング・リサーチの論理と技法」から。

<素養関係>
・企業行動を理解しマーケティング視点に立脚している
・消費者の心理や行動に強い関心がある
・論理的思考、科学的思考ができる
・チャレンジ精神が旺盛である
・サービス精神がある
・責任感が強い
<能力関係>
・リサーチの企画・設計に優れている
・実査・集計業務に明るい
・分析能力、洞察力、要約力に優れている
・文章表現が豊かである
・口頭プレゼンテーションに優れている
・数字に明るい
<態度関係>
・問題点を完全に解決しようとする気持ちが強い
・作業効率を高める努力をする
・自社内のリサーチ発注部門を支援しようとする気持ちが強い
(筆者注:「自社内のリサーチ発注部門」は、「クライアント」へ置き換え可)

続いて、「リサーチャーの仕事」から。

<知識>
・基本的な知識は何か
 →信頼できる情報にアクセスする、コンピューターの腹の中を知る、
   質的情報の分析技術をもつ
・リサーチの専門知識は何か
 →サンプル調査の常識とは何か、リサーチ内容の専門知識とは何か、
   テーマに影響する周辺知識を持つ、
<能力>
・情報整理術を身につける
 →引き出しをたくさん持つ、引き出しの関係性を体で覚える
・分析能力を磨く
 →重要性で順位をつける、因果関係をはっきりさせる
・表現力がいる
 →説得力のある文章を書く、表やグラフを活用する
・課題を解決する発想力がいる
 →データに基づいて考察する、問題点を浮き彫りにする

最後に、「マーケティング・リサーチ業界」から。

・第一に必要なのはリサーチ・センス
 →物事の因果関係や関連性を見極めることができて、なおかつそこに隠された
   課題や問題点を明らかにできる能力
・分析力を磨くこと
 →ある事柄を先入観なしに細かな要素に分解して、さまざまな角度から
   その内容や性質を分類し、再び統合して新たな情報を構築していくこと
・論理的な思考を養うことが分析力をつける
 →閃きをしっかりと理屈にできて、ちゃんとしたシナリオが書けるような
   論理的な思考が必要
・表現力=プレゼン力が調査の価値を高める
 →調査をやって得られた結果をどうクライアントに説明するか

どう?3つの本から引用したけど、共通することが多いでしょう?

Q子 そうですね。意外だったのは、プレゼンテーション力かな。
「調査」っていうと、なんか研究、地道にこつこつ、って印象があったから。

owl そうだね。調査会社に入る人には、人と話すのがあまり得意じゃなくて、こつこつと仕事をするのが好きだから、という人も少なく無いんだよ。とくに、男でね(^^;
ただ、調査会社って、サービス業なんだよね。人と接するのが苦手な人はNGだよね、基本的に。ここでは、対クライアント視点で書かれているけど、実査セクションだって、調査員さんや対象者の方と接しないといけないし、クライアントと接するよりも、こちらの方が難しいかもしれない。
ただ、集計セクションだと、たしかに地道にこつこつという面も無きにしも非ずだけど・・・。

Q子 リサーチャーって、結構たいへんですね・・・。
となると、待遇面が気になったりしますが・・・(^^;。

owl また、実利に戻る・・・。
待遇ね・・・。会社による差が大きいと思うし、公開されているデータがないから、正確なところはわからない。ただ、一般的には、スペシャリストという言葉ほどにはよくはないと思う。たとえば、広告代理店やシンクタンクと比べると低いと思う。といって、世間一般と比べて悪い、というほどではないと思うけど。。。
やっぱり、どれだけデータに付加価値がつけられるか=データの分析能力や提案力が高いか、によると思うよ。
それと、調査って土日や夜に行うことが少なく無いから、ふつうに土日に休めないこともあるし、クライアントがいるので納期がぎりぎりのときとか、実査前日とかは、残業で終電間近ということもあるよね。
あとは、この仕事にどれくらいやりがいを持てるか、かな。
または、調査会社でリサーチに必要な知識や能力を積んで、広告代理店とか企業にステップアップするか。

P夫 企業だって、いろいろですよ・・・。

owl そうだよね。だから、就職するにしても転職するにしても、自分のやりたい仕事ができるか、自分の提供している価値に見合った待遇を受けているか、他の会社に行けばその待遇を期待できるか、将来的にいまの会社で成長できるか、他の会社に行った方が成長できるか、こういうことを総合的に判断しないとね。
体力的、精神的にしんどいという場合もあるだろうけど・・・。

Q子 はい、よくわかりました。

owl さて、調査業界のことについて、長々とやってきたけど、やっと本題に入れそうだね。
では、次回からは、マーケティング・リサーチについて勉強していくことにしよう。

P夫 やっとだよ・・・。




リサーチャーをめざす人へ(1)

Q子 前の寺子屋から、2週間以上経っているんですけど・・・(-_-)

owl そうだね(^^;
実は、かなり迷っていたんだ。どのように伝えればいいのか・・・。
腹を括って、はじめるけど、これはowl個人の考え方として、聞いて欲しいんだ。たぶん、反論したい人もいると思う。ただ、このような情報はなかなか無いみたいだから、多少偏りがあるかもしれないけど、少しでも、マーケティング・リサーチャーとは?とか、マーケティング・リサーチに興味のある人、マーケティング・リサーチを仕事にしたい人、リサーチャーになりたい人の参考になれば。。。

P夫 歯切れ悪いですね・・・。

owl ・・・・。はじめるよ!

まずweb上で、マーケティング・リサーチの仕事について整理しているものを探すと、つぎのようなサイトがあるみたいだね(2006/12/7現在)。

ただ、いずれもマーケティング・リサーチャーって、どんな仕事をするのかはわかるけど、具体的に、どんな企業に入ればいいかは書かれていない。当然かもしれないけど。

Q子 そうですね・・・。で、どんな会社に入ればいいんですか?マーケティング・リサーチを仕事にしたいと思っている人は?

owl まず、「マーケティング・リサーチをやりたい」というのが、「リサーチに興味がある」のか、「マーケティングに興味がある」のか、ということを、きちんと整理してほしいんだ。いいかえれば、リサーチャーになりたいのか、マーケターになりたいのか?

Q子 う~ん・・・。リサーチャーとマーケターって、どう違うんですか?

owl そうだね・・・。とっても卑近な言い方をしてしまうと、リサーチャーは「リサーチそのものが仕事」、マーケターは「リサーチで得られたデータから、どう売れる仕組みをつくるかが仕事」。あるいは、リサーチャーは「論理的・分析的・客観的思考がメイン」で、マーケターは「情熱的・創造的・主観的思考がメイン」かな。

Q子 いまいち、よくわかりません・・・。

owl では、リサーチャーは「世の中や人に興味があり、その構造や気持ちを見つめていたい人向き」で、マーケターは「事業を行うことに興味があり、商品やサービスを開発して、多くの人に買ってもらいたい人向き」というのは?個人的な解釈だけど。

Q子 なんとなく、わかります。でも、これまでowlさんは、リサーチャーもマーケティングの知識がないといけないと言っていませんでしたか?だとすると、リサーチャーとマーケターを分けることは矛盾になりませんか?

owl そうだね、リサーチャーもマーケティングの知識は必要だし、マーケターもリサーチの知識は知っておいた方がいい。けれど、リサーチャーの仕事とマーケターの仕事は、実際に異なるんだよ。
よくあるのが、実はマーケターを志向しているのに、「マーケティング」リサーチだからといって、調査会社に入社して理想と現実のギャップを感じてしまうという誤り。調査会社では、マーケティングの実務には携わることはできないからね。クライアントと一緒に考えて、提言を行うことはできるけど、実際に商品を形にして、広告を考えて、売り方を考えるのは、クライアントの仕事だから。
だから、「マーケター」を志向している人は、「マーケティング・リサーチ」がやりたいというのとは違うので、これから話をすることは参考にならない。

P夫 たしかに、僕なんかはリサーチのやり方とかにはあまり興味がなくて、どんなデータが得られたか、それをどう使うかということが仕事ですからね。でも今度、うちの会社でも元リサーチ会社出身の人を中途採用しないといけないかな、なんて話をしていますよ。

owl それは、P夫君の会社で、リサーチを理解している人がいないからだろうね。クライアントサイドでも、リサーチを理解している人は必要だから。とくにこれからは、単純に「アンケートをしてみました~」というだけでは課題への答えが見つからない場合も増えてくるだろうし、そうなるとリサーチについての理解がしっかりしている人が必要になってくると思う。

Q子 私は、いまはリサーチに興味があると思っているんですけど、そのうちに自分で商品を作ってみたくなるかも。。。そんな人は、どうしたらいいんですか?

owl とりあえず、調査会社に就職して、その後に代理店や、企業のマーケティングセクションなどに転職するんだね。

Q子 ありえるんですか、そういう進路が。

owl あるよ。あるけど、調査会社で何をしてきたか、が大切になるんだけど。
では、リサーチャーの進路について、整理しよう。ここでは、マーケターではなく、「リサーチャーになりたい」と思っている人をメインに話をするよ。
リサーチャーになるためには、つぎの4つの道筋があると思う。調査会社、広告代理店、シンクタンク、企業のマーケティングセクション。

Q子 どう違うんですか?

owl 調査会社は、リサーチを主業務としている会社だから、入ってからリサーチができなかったということは、ほとんどないだろうね。でも、他の3つは、リサーチは他のいろいろな職種のひとつでしかなく、リサーチを担当できるかどうかは、入ってみないとわからない。とくに、企業のマーケティングセクションなんて、そこに行けるかどうかはまったくわからない。
ただし、いまの時点で「リサーチとマーケティングと、どちらか迷っている」という人は、広告代理店がいいかもしれない。あるいは、「研究がしたい、コンサルタントになりたい」という想いが強い人は、シンクタンクがいいだろう。そして、「好きな商品や業界があって、どうしてもその商品や業界に関わっていたい」というのであれば、企業のマーケティングセクションを目指すべきだろう。

Q子 なんだ。だったら、リサーチャーを目指したい人は、調査会社でいいんじゃないですか?何か問題でも?

owl うん・・・。こんどは、「リサーチャー」に何をイメージしているかが問題になる。
まず、ここ(マーケティング・リサーチ業界とは2)でも整理したけど、調査会社にもいろいろあって、それこそ実査しかしないところから、リサーチ&コンサルとして認められている会社まである。あるいはアンケートなどの量的調査がメインの会社と、グループインタビューなどの質的な調査がメインの会社という分け方もできる。
だから、自分がどんなマーケティング・リサーチをしたいのかで、選ぶべき調査会社は、まったく違ってくるんだ。ここで選択ミスをすると、こんなはずではなかった・・・、ということになる。
それと、調査会社も組織があって、実査をするセクション、集計をするセクション、営業をするセクション、企画・分析をするセクションと分かれていることもある。とくに、規模の大きな調査会社はそうだろうね。確かに、すべてリサーチに関わるし、企画・分析をするには実査や集計の経験があった方がいいけど、中にはセクション間の移動がなかなか無い会社もあるだろう。そうなると、企画・分析がしたいと思って調査会社に入ったのに、そういう仕事ができないということも起こりうるんだ。そして、企画・分析をしていないと、調査業界以外への転職はなかなか難しくなる・・・。

Q子 じゃあ、どうしたらいいんですか!(-_-)

owl 自分がやりたいリサーチは、どんなリサーチなのかをきちんと整理する。そして、いろいろな調査会社を調べてみる。これしか、ないかと・・・。
調査会社のリストは、JMRAにあるので、こちら(JMRA正会員社紹介)を参考にしてください。。。
それと、JMRA会員社以外にも、リサーチをしているところはあるので、あとは地道に検索してください。。。

Q子 具体的に(-_-)

owl はい(^^;
まず、自分のやりたいリサーチが、量的なものか、質的なものか、どちらもか。
数字に苦手意識がなくて、数字のデータをいろいろと分析してみたいというなら量的志向。人と話をするのが好きで、言葉を元に分析してみたいというなら質的志向。少し乱暴だけど、こんな感じです。
それと、調査そのもの=データを集めることやインタビューをすることが好きなのか、集計や分析をするのが好きなのか、マーケティング的な視点で提言までしてみたいのか、ということも考えておいた方がいいと思います。

Q子 で、調査会社を調べるには?(-_-)

owl う~ん・・・、実はこれが難題。。。
まずは、ホームページを見てみることだろうね。その内容が、自分の考えているリサーチとあっているかどうかが、最初だと思う。ホームページをみると、量的調査に力が入っているのか、質的調査に力が入っているのかは、すぐにわかる。それと、調査のことばかり書かれているのか、マーケティング・テーマ的な視点でも書かれているのか、新しい調査技術や分析技術を開発しているか、といったあたりをチェックすればいいと思う。

Q子 でも、それでは、入社してからどんな仕事をするかは、わからないですよね(-_-)

owl そう・・・。それは、その会社に実際に勤めている人に話を聞いてみるしかないよね・・・。もしくは、会社説明会の時に、配属の考え方とか、ジョブローテーションについて質問をしてみる。どこまで、本音で話をするかわからないけど・・・。あるいは、学生の時に、これはと思う会社でアルバイトをしてみるとか。。。
そうでなければ、あまり大きな調査会社を選ばない、かな。非装置型の調査会社は、一人でなんでもやらないといけないので、実査だけ、集計だけということはなく、最初から一通りのことを任せられる可能性も高いから。ただ、その分、仕事はハードになる可能性もあるし、やっぱり会社によってできることと、できないことの差が大きいというリスクはあるけど・・・。

って、そんなことばかり気にしてないで、もっと、どんな仕事をしたいのか、どんな適性が必要なのかとか、そういうことを考えないと!

Q子 てへ(^^;
では、つぎにその点について、お願いしま~す。

PS.
リサーチ業界がどういうところで、どんな仕事をしているのかを知りたい方、「マーケティング・リサーチ業界」という本を読んでみてください。。。