日別アーカイブ: 2006-10-20

「情報のさばき方」

情報のさばき方―新聞記者の実戦ヒント 情報のさばき方―新聞記者の実戦ヒント
価格:¥ 756(税込)
発売日:2006-10

(すっかり、本紹介のblogと化していますが・・・。)

実は、まだ読了していないのですが、これはマーケティング・リサーチャーにとっては必読の本だと感じ、早々にアップすることにしました。

著者は、朝日新聞の編集局長です。情報のさばき方について、つかむ=収集、よむ=分析・加工、伝える=発信の3つの視点から解説しています。
収集・分析・加工・発信(報告)は、マーケティング・リサーチャーの仕事そのもです。
だからでしょうか、至るところにリサーチャーが心がけるべき視点がちりばめられています。

いわく、

疋田さんはインタビューについて、「こちらのおしゃべりは最小限に止めるようにしている」と書きます。続けてこう心得を説いています。「間違っても、こちらの論理を押し付けて相手を誘導することがないように心掛けている。とりわけ寡黙なひとの場合に、そうする。じれないで、何分間でも、その人の答えが出てくるのを待つ」。ここが肝心です。

まさに、グループインタビューやデプスインタビューのポイントです。

また、このような文章もあります。

新聞記者に限らず、人は経験を積めば積むほど、既知の事項から割り出したある種の推量や、世故に倣った「常識」で物事を判断しがちです。・・・(中略)・・・先入観や固定観念、自分の頭で考えた表現や論理を相手に押し付けてしまえば、記者は事実を発見することなく、逆に事実を自分の見方や考え方の鋳型にはめてしまうだけなのですから。

データを読むときには、厳に戒めなければならないポイントです。しかし、陥りがちなポイントです。「記者」を「リサーチャー」と置き換えても、そのままリサーチの世界にも当てはまります。

次のような文章もあります。

仮説なしに現場に行った場合、記者は自分で何を見聞きしているのかわからず、散漫な印象だけを残して帰る、といったことがしばしば起きがちです。自分が何を見ようとしているのか、意識化する前段の作業があれば、どこで、なぜその仮説が裏切られたのかを検証することができます。

「調査は仮説をたててから」、ということもリサーチの世界ではよく言われることです。
仮説のない調査をしてしまうと、データの山に埋もれてしまい、どこから、どうデータを読めばいいのかわからなくなってしまいます。

リサーチについて書いてある本だと、見過ごしてしまいそうなポイントが、このように別の職業の方の本で読むと、「なるほど」と思わせられるから不思議です。
まだ途中なので、これからどんな共通点が見つかるのだろうという期待感でいっぱいです。。。

あとは、皆さんで「これは」という文章を探し出してください。

「実況!”売る力”を6倍にする戦略講座」

実況!“売る力”を6倍にする戦略講座 実況!“売る力”を6倍にする戦略講座
価格:¥ 680(税込)
発売日:2006-08

owlの最初に入ったマーケティング会社とは、この本の著者が設立に参画したところです。
最初に出会ったマーケティングの師が、水口健次であったことも、かなりラッキーなことだと思っています。師とは言っても、直接教えをいただいてわけでもなく、一緒に仕事の現場にいたことがそんなに多くなかったのが残念なのですが。。。
データから現象をスパッと解釈し、ポイントを明快なフレーズで語る姿をみて、すごいなと感じていました。リサーチの面白さを私に教えてくれた一人です。

この人の語り口は独特で、とくにこの本はその語り口がいかんなく発揮されています。「実況」とあるように、どこかのセミナーで話を聞いているような感覚に陥ります。また、水口健次の本でのもうひとつの特徴は、事例を元にして語られることが多いので、理解がしやすいということがあります。

もしかしたら、いわゆる「マーケティング理論」からははずれている点もあるのかもしれません。ただ、マーケティングは実学でもあると思っているので、理論に凝り固まらずに、実際に目の前で起こっていることを、どのように活かしていくのかがより重要であると思います。この本は、そんな視点を与えてくれます。

これまで、あまたのマーケティングの本を読んだけど、もうひとつ理解できなかった、ぴんとこなかったという方に、とくにお勧めします。

今回は、この本の裏表紙にある紹介文を、引用しておきます。
この紹介に偽りはないと思います。

「値下げと新商品なんかでは“問題”は解決しない」「お客さんは自分の欲しいものを知らない」「メーカー営業はもう威張れない」・・・。現場マーケティングの泰斗が「商売の基本」をユーモアたっぷりに教える「読む講演会」。一冊読めば、あなたの売る力は6倍に!

そういえば、この本にも紹介されていますが、水口健次は以前から「多次元接点戦略」という概念を提唱していました。少し前に、「コンタクトポイント」、「タッチポイント」という概念がブームになっていましたが、「多次元接点戦略」の方がより広い概念を呈示しているのではと感じていたことを思い出しました。

水口健次の他の著書もお勧めです。
こちら↓もあわせてどうぞ。

通念への反論-顧客、ブランド、価値営業の新しい真実がある- 通念への反論-顧客、ブランド、価値営業の新しい真実がある-
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2003-06-06

マーケティング戦略の実際 マーケティング戦略の実際
価格:¥ 903(税込)
発売日:1998-03

最後にこの場を借りて、私信を。
あとがきにお名前のあがっている澤田さん、二俣さん、峰政くん。お元気そうでなによりです。お名前を拝見して、懐かしく思っています。
覚えていらっしゃるかどうかわかりませんが、もしも、拙文が御目に留まることがあれば、ご連絡いただければうれしいです。