月別アーカイブ: 2006年10月

「情報のさばき方」

情報のさばき方―新聞記者の実戦ヒント 情報のさばき方―新聞記者の実戦ヒント
価格:¥ 756(税込)
発売日:2006-10

(すっかり、本紹介のblogと化していますが・・・。)

実は、まだ読了していないのですが、これはマーケティング・リサーチャーにとっては必読の本だと感じ、早々にアップすることにしました。

著者は、朝日新聞の編集局長です。情報のさばき方について、つかむ=収集、よむ=分析・加工、伝える=発信の3つの視点から解説しています。
収集・分析・加工・発信(報告)は、マーケティング・リサーチャーの仕事そのもです。
だからでしょうか、至るところにリサーチャーが心がけるべき視点がちりばめられています。

いわく、

疋田さんはインタビューについて、「こちらのおしゃべりは最小限に止めるようにしている」と書きます。続けてこう心得を説いています。「間違っても、こちらの論理を押し付けて相手を誘導することがないように心掛けている。とりわけ寡黙なひとの場合に、そうする。じれないで、何分間でも、その人の答えが出てくるのを待つ」。ここが肝心です。

まさに、グループインタビューやデプスインタビューのポイントです。

また、このような文章もあります。

新聞記者に限らず、人は経験を積めば積むほど、既知の事項から割り出したある種の推量や、世故に倣った「常識」で物事を判断しがちです。・・・(中略)・・・先入観や固定観念、自分の頭で考えた表現や論理を相手に押し付けてしまえば、記者は事実を発見することなく、逆に事実を自分の見方や考え方の鋳型にはめてしまうだけなのですから。

データを読むときには、厳に戒めなければならないポイントです。しかし、陥りがちなポイントです。「記者」を「リサーチャー」と置き換えても、そのままリサーチの世界にも当てはまります。

次のような文章もあります。

仮説なしに現場に行った場合、記者は自分で何を見聞きしているのかわからず、散漫な印象だけを残して帰る、といったことがしばしば起きがちです。自分が何を見ようとしているのか、意識化する前段の作業があれば、どこで、なぜその仮説が裏切られたのかを検証することができます。

「調査は仮説をたててから」、ということもリサーチの世界ではよく言われることです。
仮説のない調査をしてしまうと、データの山に埋もれてしまい、どこから、どうデータを読めばいいのかわからなくなってしまいます。

リサーチについて書いてある本だと、見過ごしてしまいそうなポイントが、このように別の職業の方の本で読むと、「なるほど」と思わせられるから不思議です。
まだ途中なので、これからどんな共通点が見つかるのだろうという期待感でいっぱいです。。。

あとは、皆さんで「これは」という文章を探し出してください。

「実況!”売る力”を6倍にする戦略講座」

実況!“売る力”を6倍にする戦略講座 実況!“売る力”を6倍にする戦略講座
価格:¥ 680(税込)
発売日:2006-08

owlの最初に入ったマーケティング会社とは、この本の著者が設立に参画したところです。
最初に出会ったマーケティングの師が、水口健次であったことも、かなりラッキーなことだと思っています。師とは言っても、直接教えをいただいてわけでもなく、一緒に仕事の現場にいたことがそんなに多くなかったのが残念なのですが。。。
データから現象をスパッと解釈し、ポイントを明快なフレーズで語る姿をみて、すごいなと感じていました。リサーチの面白さを私に教えてくれた一人です。

この人の語り口は独特で、とくにこの本はその語り口がいかんなく発揮されています。「実況」とあるように、どこかのセミナーで話を聞いているような感覚に陥ります。また、水口健次の本でのもうひとつの特徴は、事例を元にして語られることが多いので、理解がしやすいということがあります。

もしかしたら、いわゆる「マーケティング理論」からははずれている点もあるのかもしれません。ただ、マーケティングは実学でもあると思っているので、理論に凝り固まらずに、実際に目の前で起こっていることを、どのように活かしていくのかがより重要であると思います。この本は、そんな視点を与えてくれます。

これまで、あまたのマーケティングの本を読んだけど、もうひとつ理解できなかった、ぴんとこなかったという方に、とくにお勧めします。

今回は、この本の裏表紙にある紹介文を、引用しておきます。
この紹介に偽りはないと思います。

「値下げと新商品なんかでは“問題”は解決しない」「お客さんは自分の欲しいものを知らない」「メーカー営業はもう威張れない」・・・。現場マーケティングの泰斗が「商売の基本」をユーモアたっぷりに教える「読む講演会」。一冊読めば、あなたの売る力は6倍に!

そういえば、この本にも紹介されていますが、水口健次は以前から「多次元接点戦略」という概念を提唱していました。少し前に、「コンタクトポイント」、「タッチポイント」という概念がブームになっていましたが、「多次元接点戦略」の方がより広い概念を呈示しているのではと感じていたことを思い出しました。

水口健次の他の著書もお勧めです。
こちら↓もあわせてどうぞ。

通念への反論-顧客、ブランド、価値営業の新しい真実がある- 通念への反論-顧客、ブランド、価値営業の新しい真実がある-
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2003-06-06

マーケティング戦略の実際 マーケティング戦略の実際
価格:¥ 903(税込)
発売日:1998-03

最後にこの場を借りて、私信を。
あとがきにお名前のあがっている澤田さん、二俣さん、峰政くん。お元気そうでなによりです。お名前を拝見して、懐かしく思っています。
覚えていらっしゃるかどうかわかりませんが、もしも、拙文が御目に留まることがあれば、ご連絡いただければうれしいです。

「リサーチャーの仕事」

リサーチャーの仕事
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2000-02

「マーケティング・リサーチ業界」は、主に調査業界を知ることを目的として書かれていますが、仕事として、人の視点から「リサーチャー」について書かれているのが本書です。

「リサーチャー」は、何も調査会社にだけいるわけではないのですから、このようなスタンスでの本も必要だと思いますし、リサーチャーの本来の役割を理解するためには、こちらの本の方がよいかもしれません。リサーチが企業の中でどのような役割を担うのか?、リサーチャーの仕事は?、求められる資質や能力は?、組織の中でリサーチャーをどう活かすのか?、など内容も多岐にわたります。
比較のために、もくじを引用しておきます。

1章 ハイリスク時代のビジネス対応
2章 変化を読み取る
3章 リサーチを分類する
4章 リサーチャーの役割
5章 リサーチ・スペシャリストの役割
6章 リサーチャーの仕事
7章 リサーチャーに必要な知識
8章 リサーチャーに求められる能力
9章 リサーチャーを活かすビジネス・スタイル

あとがきには、つぎのように記されています。

リサーチャーの仕事は、基本的には地味でアカデミックなものである。発見に感動する研究心が必要である。だからと言って研究室に閉じこもっているのでは、仕事はできない。
フィールドに出て調査の対象者に接するのは、多くの場合は専門の調査員ではあるが、リサーチャーも、実査の現場を見ていないと、データの解釈が自信を持ってできない。調査員から報告を受けるだけでは、情報は十分ではない。体がいくつもあれば、自分が調査員になってデータを収集するのが理想である。

至言です。

「リサーチャー」という仕事がどんなものなのかを知りたい人には、こちらがお勧めです。




「マーケティング・リサーチ業界」

マーケティング・リサーチ業界 マーケティング・リサーチ業界
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2004-03

【追記:2008年4月に、新版が発行されてます→こちらに投稿

マーケティング・リサーチの業界は規模が大きくないため、この本が出るまでいわゆる業界本、リクルート本というものがありませんでした。
2004年3月出版なので記述されている業界データなどは古くなっていますが、マーケティング・リサーチ業界がどのようなところで、どのような仕事をしているのかを知るには、唯一の本といっていいでしょう。

ただ、この業界にいた人間からすると、少しきれいに書かれすぎているきらいもあると思います(Amazonの書評でも、そのようなコメントがみられます)ので、その点は注意して読んだほうがいいかもしれません。(まあ、他の業界でも同様でしょうが・・・)
「マーケティング・リサーチ」というと、スマートで知的な印象を持つ人も多いかもしれませんが、3章の「現場で働く人たち」を丹念に読んでいただければきちんと書いてあるとおり、結構、アナログで泥臭い仕事が多いのです、実査の現場を踏むことが重要なのです。

もくじを紹介しておきます。

第一章 マーケティング・リサーチとは
1.どんな仕事が中心か
2.マーケティング・リサーチ業界の動向
3.マーケティング・リサーチ業界の分類
4.今後の課題と挑戦
第二章 マーケティング・リサーチという仕事
1.職業人としてのマーケティング・リサーチ
2.キャリアパス
3.新卒者に求められること
4.リサーチャーに求められる資質と能力
第三章 現場で働く人たち

あとがきで、

「欧米ではリサーチャーの社会的ステータスも高く、調査会社は専門的な仕事をしている集団であるとみられているようです」

と書かれていることは、意味深ですが・・・。
(なぜ、「欧米では」と断っているのでしょう・・・)

調査会社に興味のある方は必読。

OWLはどんな人?(執筆者紹介)

P夫 owlさんは、これまでどんなことをやってきたんですか?

owl 最初に入った会社が、マーケティング会社だったんだ。ただ、それまで「マーケティング」とはどんなものかはほとんど知らなかった。大学でマスコミュニケーション論を専攻していて、広告には興味を持っていたんだけど、社会学系だったから、どちらかというと記号論とかコミュニケーション論、文化論からの視点でみていただけだったので。
社会調査論も勉強はしたんだけど、Q子さんと一緒で、いまひとつよくわからなかった。いや、わかっていなかった、というのがほんとうのところだね。ただ、この時に買わされた本は後で役にたったけどね。

Q子 そうなんですか。で、その会社ではどんなことを?

owl 最初に配属されたのが、リサーチで得られたデータの解析を主に担当する部署だった。当時はパソコン環境は今のように一人一台なんてとんでもない時代だったけど、SASという統計解析ソフトやASSUMという集計ソフトで集計をやったりしていたね。
今にして思うと、最初に集計・解析をすることができたのはラッキーだったかもしれない。後で調査会社に転職することになるんだけど、大きな調査会社は機能別に組織が分かれていることが多くて、自分で実際に集計や解析を経験できない人もいっぱいいるんだよ。
確かに、集計や解析を自分でできなくても、データの読み方とかがわかっていればそれでいいんだけど、やっぱり自分でソフトを操作することで覚えられることは多いからね。
それに、いろんな調査票をみることができたし、調査票の難しさがわかったのも実際に集計をしたことで覚えられたと思うし。

P夫 マーケティングの会社なのに、集計ばかりやっていたんですか?

owl そんなことはないよ(笑)。報告書も書いてたよ。この会社は、機能別に組織が分かれていなくて、クライアント別にチームを作って仕事をしていたんだ。だから、何かひとつの業務をしていればいいというわけではなく、いろいろなことを経験できたのもよかったね。
だからかな、リサーチをするにしても、マーケティングの視点から、調査を設計したり、結果を読むくせをつけてもらったね。この会社はマーケティング・エージェンシーとしては日本でも有数の会社だと思うし、その中でマーケティングやリサーチの勉強ができたことが、またまたラッキーだったと思うね。
マーケティング・リサーチというのは確かに「調査」だし、社会調査の基礎を知らないといけないけど、目的は「マーケティング」に寄与することだから。リサーチ、調査はあくまで手段であって、その結果をどうマーケティングに活用できるかが求められていることだから。「調査結果はこうでした」で終わっていては何の意味もなくて、「だからこうするのがいい」ということが言えないとね。

P夫 あれ?僕もいくつか調査会社に仕事を頼んだんですけど、出てくる報告書は「○○は▲▲%」ってことだけ書いてるものが多いですけど・・・。だから、その後がたいへんで。

owl それがすべてだとは思わないけど、確かに調査会社の報告書はリコメンドが弱いものが多いかもしれない。日本では、調査会社は「データを収集して、集計すること」までが業務とされることが少なくないからね。調査会社に仕事を出すほうにも問題があるとも思うけど。

Q子 じゃあ、なんで調査会社に入ったんですか?

owl マーケティング会社で仕事をしていて、リサーチの仕事が面白いと思ったことが大きいかな。マーケティング会社なんで、リサーチは一部でしかなくて、クライアントが結果を出すためにマーケティングの展開までをサポートしていたんだ。でも、そうなるとリサーチをしなくてもいい仕事も少なくないからね。それに、もっといろいろな業界のリサーチをやってみたいとも思ったし、もっとリサーチを知りたいとも思っていたね。
で、調査会社に入ったんだけど・・・。

Q子 けど?

owl うん。期待通り、それまで携わったことのない業界の仕事もできたし、いろいろなリサーチ手法も知ることができた。リサーチを究めるということでは、とても勉強になったよ。
でも、今度はどうもマーケティングから遠くなった気がするんだ。さっきも言ったように、リサーチは手段でしかないと思うんだけど、調査会社は、いかに正しいデータを収集するか、そのデータを使いやすいように集計・加工することが主な業務だったから。

Q子 そうなんですか?調査会社も希望しているんですけど・・・。

owl  それもいいんじゃないかな。マーケティングを仕事としていくためには、リサーチの知識は絶対必要だと思うからね。ただ、ほんとうに自分がやりたいことが何かをしっかり持って、会社とは別に勉強をしていかないと、日々の仕事に埋没してしまうことがあるから、その点だけは注意する必要があるだろうね。

Q子 で、いまではフリーでお仕事をしているんですよね?それはなぜですか?

owl うん、世の中にはいろいろな調査会社があるということがわかったのも、調査会社に入っていい点だったね。でも、そうなると、「この調査は、他の調査会社の方が得意なのでは?」ということを思うことも少なくなかった。でも、調査会社が他の調査会社に実査を頼むというのはなかなか難しいし、頼まれるほうも嫌がるしね。
だったら、特定の調査会社に所属することなく、フリーの立場でいればいいと考えたんだ。クライアントのテーマによって必要とするリサーチ手法や分析手法は異なるよね。そして、調査会社はそれぞれ得意とするリサーチ手法、分析手法を持っているんだから、クライアントのテーマにあわせて調査会社を使い分ければより効果的で効率的な仕事ができると思った。
で、私は何をするかというと、クライアントのテーマに沿った企画・設計を行い、実際にデータを収集する部分については調査会社をコーディネート、プロデュースしていく。で、調査会社の報告書とは別に結果をサマライズし、クライアントと一緒に今後の活動について考える。こんな活動ができれば、理想的だなと思ったんだね。

P夫 う~ん・・・。じゃあ、調査会社は具体的にどんなところなんですか?実は、僕も調査会社と仕事をしていて悩むことがあるんですよね・・・。なんか、こちらの意図が伝わらないというか、わかってないというか。

owl よし、では次回は日本の調査業界について、少し話をしよう。
では、つぎの本を次回までに読んでおくこと。

マーケティング・リサーチ業界
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2004-03

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寺子屋メンバー紹介2

P夫 owlさん、もう一人仲間を入れてもいいですか?

owl 一人では寂しいし、仲間がいた方が議論もできるから歓迎するけど、どんな人?

P夫 大学のゼミの後輩で、まだ学生なんですけど。今度、就職をするみたいで、マーケティングがやりたいとか言っていて、この寺子屋の話をしたら、一緒にやりたいと。

owl ほう、それはいいかもしれないね。

P夫 実は連れてきているんですけど。

Q子 こんにちは!P夫さんの後輩で、Q子といいます。一緒に勉強させてください!

owl Q子さんは、なんでマーケティング・リサーチの勉強をしたいと思ったの?

Q子 大学でマーケティングの授業を聞いていて、面白そうだなと思って。ただ、マーケティングにはリサーチが欠かせないということはわかるんですけど、リサーチや調査って難しそうだし、社会調査の授業も取ったんですけど、なんかぴんとこなくて。。。
でも、最近テレビでいくつか調査のことをやっていたのを見たんです。報道ステーションでは小泉さんが独自に調査を行っていて、それを元に政策や発言を考えたりしていたと。この前の古畑任三郎vs.SMAPの時も、最初に数量化Ⅲ類のマップとかいって、これまでの事件を分類してたんです。そんなのを見ていたら、おもしろそうだな、もっと知りたいな、と思って。
それに、就職もマーケティングの仕事をしてみたいと思っているので、マーケティング・リサーチって必要かなと。

owl 両方とも見たよ。さすがに、古畑任三郎で数量化Ⅲ類が出てきた時には、びっくりしたけど。わかる人がいるのかな?って・・・。だいぶ先の話になると思うけど、数量化Ⅲ類のような解析についても、勉強するからね。
でも、フジテレビは昔からマーケティングの番組は好きだったね。1990年前後だと思うけど、深夜番組で「マーケティング天国」とか「カノッサの屈辱」とかやっていてね・・・。よく見たな・・・。

P夫 owlさん、そんな遠い目で・・・。どんな番組だったんですか?

owl う~ん、説明は難しいな。。。ヤフーとか、wiki で調べてみな。

Q子 そういえば、owlさんのこと、知らないですね。。。
今度は、owlさんの自己紹介をしてくれます?

owl そうだね、では次回に。
ところで、Q子さんも前に紹介した3冊の本は、次回までに読んできてね。

Q子 はーい

「統計でウソをつく法」

統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門 統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門
価格:¥ 924(税込)
発売日:1968-07

初版が1968年とかなり古い本ですが、統計学の入門書としては古典的な本です。

「ブルーバックスの本」と聞くと、数式が出てきたりして難しいのでは?、という先入観があるかもしれませんが、副題のとおり数式はでてきませんので、数式にアレルギーがある人でも大丈夫、読み通せます。
ただ、出版されたのが40年近くも前になりますので、とりあげられる事例が古いというのは否めません。しかし、それでも今まで絶版にならずに生き延びているのですから、それなりの価値があるということです。

前の2冊(「データの罠」「社会調査のウソ」)は、どちらかというと社会学的な視点ですが、本書はあくまでも「統計学入門」ですので、この点が異なります。とはいえ、先にも書いたとおり数式はでてきません。むしろ、5章や6章で取り上げているグラフの書き方によるウソなどは、前2冊にはない視点ですし、実際いまでもよく使われている手法だったりします。

カバーから引用します。

かの有名な英国の政治家ディズレイリはいった
-ウソには三種類ある。ウソ、みえすいたウソ、そして統計。

見るもの、聞くもの、読むものに氾濫する統計。
怪しい話も数字をいわれると信じたくなる。

しかし、現代人にとって、統計は読み書き能力と同じくらい必要なものだ。
さて、だまされないために、まず、この本をどうぞ。

だまされないためには、だます方法を知ることだ!

記述も柔らかく、ユーモアもあるので、読みやすいと思います。
「統計学」という言葉に惑わされることなく、多くの人に読んでおいてもらいたい本です。
(なぜ、中学校や高校でこのような授業がないのでしょう・・・。あったのかな?)

お勧め!

「社会調査のウソ~リサーチ・リテラシーのすすめ」

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ 「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ
価格:¥ 725(税込)
発売日:2000-06

「データの罠」を読んでいて、思い出した本です。
発行は2000年と少々古いですが、内容は「データの罠」と同様に、世の中のデータや調査の問題点を指摘するものになっています。
ただ、第4章で「過ち」が起こる原因、逆にいえばリサーチをする時に注意しないといけないことが具体的に記述されている点で、よりリサーチや調査の実務には役立つ本です。

序章から、「本書の論点」とされている部分を引用します。

①世の中のいわゆる「社会調査」は過半数がゴミである。
②始末が悪いことに、ゴミは(引用されたり参考にされたりして)新たなゴミを生み、さらに増殖を続ける。
③ゴミが作られる理由はいろいろあり、調査のすべてのプロセスにわたる(いろいろと例示するつもりである)
④ゴミを作らないための正しい方法論を学ぶ。
⑤ゴミを見分ける方法(リサーチ・リテラシー/research literacy)を学ぶ。

著者は社会調査論の先生なので、ところどころ専門的になっているところもありますが、やはり新書ですので専門書のような難しさはないと思います。

お勧め。




「データの罠~世論はこうしてつくられる」

データの罠―世論はこうしてつくられる データの罠―世論はこうしてつくられる
価格:¥ 714(税込)
発売日:2006-09

最近発売されたばかりの本です。
主にマスコミで取り上げられたデータや調査を引用しながら、これらのデータや調査を見るときにどのような点に注意すべきかを教えてくれます。

この本の中でも「日本人は平均志向が強い」と指摘されていますが、実際に調査をしていても、「ランキングで1位になっているから選ぶ」「皆がいいと言うから選ぶ」「他の人はどう思っているんだろう」というような反応をする人が少なくありません。つまり、世間で公表されているデータや調査、口コミに影響されやすいようです。しかし、そのデータが正しく収集され、分析されたものでないとしたら、根本的に行動のベースが覆ることになりかねません。

そこで、データや調査結果を、どうみればよいのかというリサーチ・リテラシーが重要になるのです。ふだん、何気なく見ているデータや調査について、正しく理解する一歩になると思います。

序章から、この本の内容を紹介する部分を引用します。

第一章ではまず、世論調査の問題点について、その質問の仕方、選択肢の設定、対象者のサンプリング手法などを論じ、また、最近流行のインターネット調査やテレゴングが世論調査の名に値しないことを指摘する。
第二章では、家計調査や選挙の出口調査、各種のランキングなどさまざまな調査にまつわる課題や、視聴率調査で、コンマ1ポイントの差を競うことの無意味さなどを明らかにする。
第三章では、データの正しい見方について、日本人の平均信仰や英語力、人口などさまざまな事例をもとに解説する。
第四章では、官から民への変革期において、必ずしも正しいデータをもとに議論されていない点を明らかにし、終章で、データの罠を見抜くポイントについて具体的にまとめ、一人一人がデータを見る眼を養うことの大切さと、マスコミの姿勢の問題点を指摘する。

著者は元官僚で、今は大学の先生ですので、この紹介文もやや固めですし、「選択肢」「サンプリング」などの専門用語も出てきていますが、新書なのでそんなに読みにくい本ではないと思います。

お勧め。




寺子屋メンバー紹介1

P夫 owlさん、「はじめます!」と言ってから2日経ちますが・・・。

owl  そうだね・・・。ちょと気になる本を読んでいたから。。。

P夫 で、今日は何からはじめますか?

owl  まずは、君の自己紹介から。どんな人が、どんな目的でこの寺子屋で学ぼうとしているのかを知りたいから。

P夫 えーと、ある企業に入社して4年目です。実はこの4月からリサーチセクションに配属になったんですが、マーケティング・リサーチというものについて勉強したことがなかったので、何をどうやったらいいのか全然わからなくて。。。

owl でも、先輩たちがいるでしょ?

P夫 いるんですけど・・・。実は、うちはまだ若い会社で、これまではどちらかというと技術力を強みに商品を開発して、リサーチとかあまりやったことがないんです。なので、皆が手探りでやっている状態なので。

owl なるほど。。。で、少しは自分で勉強してみたの?

P夫 一応、WEBで「マーケティング・リサーチ」を検索してみたんですけど。これはというものはなかったですね、調査会社がいろいろあることはなんとなくわかったんですけど。それに、blogとかを検索すると「お小遣いを稼ぎましょう」みたいなものが一杯でてきて、マーケティング・リサーチってなんなんだろうって、ますます不思議になりました。

owl そうだね、blogでよくみるのはモニター募集を紹介するものが多いからね。それも、リサーチをするときには、よく考えないといけないことなんだけど・・・。その点は、おいおい勉強しよう。他には?

P夫 本も読んでみようかなと思いましたが、どれを選んだらいいか、よくわからず。。。

owl うん、いろいろな本があるからね。中を見ると、やたら数式がでてきたり。

P夫 そうなんですよ!なんか、とっつきにくくて。僕は文系なんで・・・。

owl 私も文系だけど・・・。じゃあ、とりあえずいくつかの本を紹介するから、まずはその本を読んでみて。どちらかというと、マーケティング・リサーチというよりは、世論調査や社会調査に関する本なんだけど、マーケティング・リサーチといえど、ベースとなっているのは調査理論だから。世の中のデータや調査のいい加減さを指摘しているんだけど、調査やリサーチをする上で、押さえなければならない点が、なんとなくわかってくると思うから。

P夫 はい・・・。

owl では、つぎの3冊ね。

「データの罠~世論はこうしてつくられる」(集英社新書)
「社会調査のウソ~リサーチ・リテラシーのすすめ」(文春文庫)
「統計でウソをつく法」(講談社ブルーバックス)

(これらの本については、別の投稿で紹介します)